アトランティック名盤シリーズまだまだ続けます。今日ご紹介するのはチャールズ・ミンガスが1959年に録音した「ブルース&ルーツ」です。ミンガスは言うまでもなくモダンジャズを代表するベーシストですが、ジャズ史的にはむしろバンドリーダーとしての役割が大きいかもしれません。通常のハードバップとは一味違う彼の個性的な音楽は、クセが強いのでジャズ初心者にはあまりお薦めできませんが、ハマると病みつきになる独特の魅力があります。
本作は6本の管楽器をフィーチャーした9人編成。メンバーはブッカー・アーヴィン(テナー)、ジャッキー・マクリーン&ジョン・ハンディ(アルト)、ペッパー・アダムス(バリトン)、ジミー・ネッパー&ウィリー・デニス(トロンボーン)、ホレス・パーラン(ピアノ)、ダニー・リッチモンド(ドラム)そしてミンガスという顔ぶれ。6曲目の“E's Flat Ah's Flat Too”だけピアノがパーランからマル・ウォルドロンに代わっています。どれもこれもミンガスの集めたミュージシャンだけあって一癖も二癖もある連中が揃っていますが、この頃はまだフリー的な要素はないので、辛うじて“ちょっと変わったハードバップ”の範囲内でしょうか?
曲は当然のことながら全てミンガスのオリジナル。1曲目“Wednesday Night Prayer Meeting”はゴスペル音楽のコール&レスポンスを取り上げた曲で、パーランのピアノソロに煽られるように管楽器が咆哮するようなプレイ(ミンガス?がバックで実際に叫んでいます)を繰り広げ、熱狂的な雰囲気が形作られます。続く“Cryin' Blues”は文字通りブルースでこれもパーランの糸を引くようなソロが印象的。3曲目“Moanin'”はアダムスの重低音のバリトンが、4曲目“Tensions”はミンガスのソロがそれぞれ活躍します。5曲目“My Jelly Roll Soul”は唯一陽気なナンバーで、ミンガスのあ~ら~よっと♪という手拍子が聞こえてきそうです。最後の“E's Flat Ah's Flat Too”は疾走感あふれるナンバーでマル・ウォルドロンのソロに煽られるように、各管楽器が熱いソロを繰り広げます。これも1曲目同様ミンガスがシャウトしてます。初めてミンガスを聴く人は、何このテンション?何この叫び声?となるでしょうが、独特のミンガス・ワールドを知るには最適な1枚と言えるかもしれません。