本日もアトランティックの名盤シリーズからピアニスト、ジャック・ウィルソンの作品を取り上げます。タイトル通りヴァイブ奏者のロイ・エアーズを全面的にフィーチャーした作品で実質2人の共同作と言っていいかもしれません。ウィルソンは主に1960年代に活躍したピアニストで録音自体はそんなに多くないですが、天下のブルーノートに3枚のリーダー作を残したおかげで日本のジャズファンの間での知名度はそこそこあるかもしれません。リー・モーガン、ジャッキー・マクリーンも参加した「イースタリー・ウィンズ」はジャズファン必携の名盤ですね。ただ、彼にとっての初リーダー作は1963年に残した本作だそうです。
メンバーはウィルソン(ピアノ)、エアーズ(ヴァイブ)に加え、アル・マッキボン(ベース)とニック・マルティニス(ドラム)。4人とも西海岸のロサンゼルスで活躍していたようです。曲は冒頭がボサノバの名曲“Corcovado”ですが、それ以外は全てウィルソンのオリジナル。63年と言えばハードバップからモードジャズへと主流が移り変わる時期ですが、ウィルソンの作る曲も決して奇を衒わないながらも全編モーダルな雰囲気を漂わせています。軽快なワルツ調の“De Critifeux”、続く幻想的な“Nirvana & Dana”あたりが白眉ですね。ちなみに“Nirvana”は例の「イースタリー・ウィンズ」でも再演されています。演奏ではやはりウィルソンのピアノが素晴らしい。テクニック的にも申し分ないし、モーダルな音の使い方も抜群です。ロイ・エアーズも後年ファンクに傾倒し、レア・グルーブの中心人物として活躍しますが、この頃はいたって正統派のジャズ・ヴィブラフォニスト。ボビー・ハッチャーソンに勝るとも劣らない華麗なマレット捌きで、充実した演奏を聴かせてくれます。