本日もアトランティックの廉価版コレクションからフレディ・ハバードが1966年に残した「バックラッシュ」を取り上げたいと思います。ハバードは今さら説明の必要もないとは思いますが、ジャズ史上の最重要トランペッターの一人で、とりわけ60年代に流行したモードジャズや新主流派ジャズではまさに引っ張りだこの存在でした。特にブルーノートに録音が多く、名盤「オープン・セサミ」を皮切りに60年代前半で9枚のリーダー作を残しています。ただ、60年代後半にアトランティックに残した作品群はあまり振り返られることはないので今回が貴重な再発です。
メンバーはリーダーのハバード(トランペット)に加え、ジェイムズ・スポールディング(アルト&フルート)、アルバート・デイリー(ピアノ)、ボブ・カニンガム(ベース)、オーティス・レイ・アップルトン(ドラム)、レイ・バレト(コンガ)となっています。正直マイナーな顔ぶれですね。これがブルーノートだとハービー・ハンコックあたりがピアノを務めるのでしょうが。とは言え、デイリーもなかなかの実力者なので演奏の方は申し分ないです。
曲はいかにも60年代らしくバラエティに富んだ内容。まず冒頭“Backlash”と2曲目“The Return Of The Prodigal Son”が当時流行りのジャズロック。どちらもベタベタなメロディ展開ですが、ハバードの強烈なトランペットに引っ張られるように全員がノリノリの演奏を聴かせてくれます。3曲目は一転してボサノバ調の“Little Sunflower”で、ハバードの叙情的なプレイに加え、ジェイムズ・スポールディングのフルートが幻想的な雰囲気を醸し出しています。4曲目“On The Que-Tee”はいかにも新主流派と言ったかっこいいナンバー。ハバード、スポールディング、デイリーの順にエッジの利いたソロを聴かせてくれます。5曲目“Up Jumped Spring”はハバードがジャズ・メッセンジャーズに在籍していた時に書き下ろしたナンバーで、名盤「スリー・ブラインド・マイス」にも収録されている名曲です。キャッチーでノリのいいハードバップですね。ラストの“Echoes Of Blue”だけはアバンギャルドでよーわからん曲ですが、全体的には文句なしの出来で、ハバードの隠れた名盤と評価してもいいんじゃないでしょーか?