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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

アート・ファーマー&ジム・ホール/インターアクション

2012-08-16 23:21:52 | ジャズ(その他)
本日もアトランティック名盤シリーズからの1枚。アート・ファーマーが名ギタリスト、ジム・ホールとコラボした名作「インターアクション」を紹介します。録音は1963年、メンバーは上記2人に加えて、スティーヴ・スワロウ(ベース)とウォルター・パーキンス(ドラム)から成るピアノレスカルテットです。個人的にはピアノのないジャズ演奏はどうしてもスイング感に欠けるためあまり好みではないのですが、本作はファーマーのくすんだフリューゲルホーンの音色とホールの温かいギターの音色が室内楽的な魅力を醸し出していて、非常に味わい深い作品となっています。



ファーマーは50年代半ばこそハードバップの中心人物としてバリバリトランペットを吹いていましたが、60年代に入るとフリューゲルホルンに楽器を持ち替え、よりソフトな演奏を持ち味とするようになりました。この路線変更は大正解で、ジャズ界がモード、フリー、さらにフュージョンと激変する中、ファーマーはソフト・ジャズ路線でコンスタントに活躍し続けます。本作はちょうどその転換期の作品ですね。もう一人の主役、ジム・ホールに関してはあえて説明するまでもないでしょう。ソロの場面の鮮やかなシングルトーンも素晴らしいですが、サポートに回った時の的確なバッキングもまさに名人芸ですね。曲は全て有名なスタンダードばかりですが、2人の名手によって新たな生命を吹き込まれています。特にヘンリー・マンシーニの名曲“Days Of Wine And Roses”、ラテンタッチに味付けされたパーカーナンバー“My Little Suede Shoes”、落ち着いたバラード“Sometime Ago”が素晴らしいですね。




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コールマン・ホーキンス/ザ・ホーク・スウィングス

2012-08-11 23:27:52 | ジャズ(スイング~中間派)

本日はクラウン・レコードの紙ジャケコレクションからコールマン・ホーキンスの「ザ・ホーク・スウィングス」を取り上げます。ホーキンスと言えば、1920年代から活躍する超ベテラン。録音時の1960年で56歳とまさに“大御所”です。ただ、同年代のベン・ウェブスターもそうですが、ホーキンスはハードバップ世代のミュージシャンとも積極的に活動しており、アルバムもたくさん残しています。ヴァーヴに残した「ジェリコの戦い」が特に有名ですが、個人的にはムーズヴィル盤「ザ・ホーク・リラクシーズ」も隠れ名盤として高く評価しています。



本作のメンバーはサド・ジョーンズ(トランペット)、エディ・コスタ(ピアノ)、ジョージ・デュヴィヴィエ(ベース)、オシー・ジョンソン(ドラム)。派手ではありませんが、いぶし銀のメンバーが揃っています。ホーキンズのテナーはどちらかと言うとオールドスタイルですから、もろハードバップと言うより中間派的なメンバーの方が合うのかもしれません。曲目については詳しい紹介がなく、全部オリジナルと思われますが、どれもトラディショナルな香りのするジャズ。ホーキンスはアップテンポでもスローなブルースでも関係なく、悠然と持ち前の野太いブロウを聴かせます。サドの乾いたトランペット、意外と正統派なコスタのピアノも印象的です。ただ、ホーキンスの真骨頂と言えばやはりバラード演奏。ラストの“Shadows”でのダンディズムあふれるテナーソロには惚れ惚れするばかりです。

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ジョー・ザヴィヌル/マネー・イン・ザ・ポケット

2012-08-11 05:21:35 | ジャズ(モード~新主流派)
本日紹介するアトランティック名盤シリーズはジョー・ザヴィヌルの「マネー・イン・ザ・ポケット」です。ジョー・ザヴィヌルは以前にも紹介しましたが、オーストリア出身のピアニストでまずキャノンボール・アダレイとの共演で脚光を浴び、70年代にはウェイン・ショーターとウェザー・リポートを結成、フュージョン・ブームを巻き起こしました。本作は1966年ですから、キャノンボールのグループに在籍していた頃の作品です。



サポートメンバーは何気に豪華です。フロントがブルー・ミッチェル(トランペット)、ジョー・ヘンダーソン(テナー)、ペッパー・アダムス(バリトン)。ベースとドラムはキャノンボール・グループの同僚であるサム・ジョーンズ&ルイス・ヘイズです。1曲目の“Money In The Pocket”だけ、テナーがクリフ・ジョーダン、ベースがボブ・クランショー、ドラムがロイ・マカーディに代わっていますが、いずれにせよ当時のジャズシーンの一流所ばかりですね。

曲はメンバーのオリジナルが中心。ザヴィヌルはかの“Mercy, Mercy, Mercy”を作曲したようにヨーロッパ人ながらファンキーな曲調を得意としていますが、本作ではタイトルチューンの“Money In The Pocket”“Some More Of Dat”がまさにその路線です。ただ、個人的にはモーダルな曲調の方が好みですかね。特にザヴィヌル作の“Midnight Mood”“Riverbed”は魅力的なメロディを持った佳曲です。ピアノトリオで演奏される“Sharon's Waltz”もしっとりした名バラード。ピアノソロの“My One And Only Love”だけは明らかに浮いてますが、全体的にバランスの取れた好盤だと思います。
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ジャック・ウィルソン・カルテット・フィーチャリング・ロイ・エアーズ

2012-08-08 22:56:24 | ジャズ(モード~新主流派)

本日もアトランティックの名盤シリーズからピアニスト、ジャック・ウィルソンの作品を取り上げます。タイトル通りヴァイブ奏者のロイ・エアーズを全面的にフィーチャーした作品で実質2人の共同作と言っていいかもしれません。ウィルソンは主に1960年代に活躍したピアニストで録音自体はそんなに多くないですが、天下のブルーノートに3枚のリーダー作を残したおかげで日本のジャズファンの間での知名度はそこそこあるかもしれません。リー・モーガン、ジャッキー・マクリーンも参加した「イースタリー・ウィンズ」はジャズファン必携の名盤ですね。ただ、彼にとっての初リーダー作は1963年に残した本作だそうです。



メンバーはウィルソン(ピアノ)、エアーズ(ヴァイブ)に加え、アル・マッキボン(ベース)とニック・マルティニス(ドラム)。4人とも西海岸のロサンゼルスで活躍していたようです。曲は冒頭がボサノバの名曲“Corcovado”ですが、それ以外は全てウィルソンのオリジナル。63年と言えばハードバップからモードジャズへと主流が移り変わる時期ですが、ウィルソンの作る曲も決して奇を衒わないながらも全編モーダルな雰囲気を漂わせています。軽快なワルツ調の“De Critifeux”、続く幻想的な“Nirvana & Dana”あたりが白眉ですね。ちなみに“Nirvana”は例の「イースタリー・ウィンズ」でも再演されています。演奏ではやはりウィルソンのピアノが素晴らしい。テクニック的にも申し分ないし、モーダルな音の使い方も抜群です。ロイ・エアーズも後年ファンクに傾倒し、レア・グルーブの中心人物として活躍しますが、この頃はいたって正統派のジャズ・ヴィブラフォニスト。ボビー・ハッチャーソンに勝るとも劣らない華麗なマレット捌きで、充実した演奏を聴かせてくれます。

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チャールズ・ミンガス/ブルース&ルーツ

2012-08-05 22:45:51 | ジャズ(その他)

アトランティック名盤シリーズまだまだ続けます。今日ご紹介するのはチャールズ・ミンガスが1959年に録音した「ブルース&ルーツ」です。ミンガスは言うまでもなくモダンジャズを代表するベーシストですが、ジャズ史的にはむしろバンドリーダーとしての役割が大きいかもしれません。通常のハードバップとは一味違う彼の個性的な音楽は、クセが強いのでジャズ初心者にはあまりお薦めできませんが、ハマると病みつきになる独特の魅力があります。



本作は6本の管楽器をフィーチャーした9人編成。メンバーはブッカー・アーヴィン(テナー)、ジャッキー・マクリーン&ジョン・ハンディ(アルト)、ペッパー・アダムス(バリトン)、ジミー・ネッパー&ウィリー・デニス(トロンボーン)、ホレス・パーラン(ピアノ)、ダニー・リッチモンド(ドラム)そしてミンガスという顔ぶれ。6曲目の“E's Flat Ah's Flat Too”だけピアノがパーランからマル・ウォルドロンに代わっています。どれもこれもミンガスの集めたミュージシャンだけあって一癖も二癖もある連中が揃っていますが、この頃はまだフリー的な要素はないので、辛うじて“ちょっと変わったハードバップ”の範囲内でしょうか?

曲は当然のことながら全てミンガスのオリジナル。1曲目“Wednesday Night Prayer Meeting”はゴスペル音楽のコール&レスポンスを取り上げた曲で、パーランのピアノソロに煽られるように管楽器が咆哮するようなプレイ(ミンガス?がバックで実際に叫んでいます)を繰り広げ、熱狂的な雰囲気が形作られます。続く“Cryin' Blues”は文字通りブルースでこれもパーランの糸を引くようなソロが印象的。3曲目“Moanin'”はアダムスの重低音のバリトンが、4曲目“Tensions”はミンガスのソロがそれぞれ活躍します。5曲目“My Jelly Roll Soul”は唯一陽気なナンバーで、ミンガスのあ~ら~よっと♪という手拍子が聞こえてきそうです。最後の“E's Flat Ah's Flat Too”は疾走感あふれるナンバーでマル・ウォルドロンのソロに煽られるように、各管楽器が熱いソロを繰り広げます。これも1曲目同様ミンガスがシャウトしてます。初めてミンガスを聴く人は、何このテンション?何この叫び声?となるでしょうが、独特のミンガス・ワールドを知るには最適な1枚と言えるかもしれません。

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