
ファーマーは50年代半ばこそハードバップの中心人物としてバリバリトランペットを吹いていましたが、60年代に入るとフリューゲルホルンに楽器を持ち替え、よりソフトな演奏を持ち味とするようになりました。この路線変更は大正解で、ジャズ界がモード、フリー、さらにフュージョンと激変する中、ファーマーはソフト・ジャズ路線でコンスタントに活躍し続けます。本作はちょうどその転換期の作品ですね。もう一人の主役、ジム・ホールに関してはあえて説明するまでもないでしょう。ソロの場面の鮮やかなシングルトーンも素晴らしいですが、サポートに回った時の的確なバッキングもまさに名人芸ですね。曲は全て有名なスタンダードばかりですが、2人の名手によって新たな生命を吹き込まれています。特にヘンリー・マンシーニの名曲“Days Of Wine And Roses”、ラテンタッチに味付けされたパーカーナンバー“My Little Suede Shoes”、落ち着いたバラード“Sometime Ago”が素晴らしいですね。