自称「地理マニア」の僕だけど、名前すら知らない市もまだまだたくさんある。その1つが「愛知県半田市」。
ひょんなことから、今回の旅行の宿泊地になった。名古屋市の南、知多半島の中央にある人口約12万の都市。周辺には、中部国際空港(セントレア)と焼き物で有名な常滑市、騎手と同姓同名(?)の武豊町(たけとよちょう)、隣接してはいないが半島先端部には「南セントレア市」と名付けられそうになったが立ち消えになった町などがある。
鉄道はJRと名古屋鉄道(名鉄)が通っている。JRでは東海道本線の大府(おおぶ)駅で武豊線というディーゼルカーに乗り換えが必要(一部は直通)で、名古屋方面からは遠回りで本数も少ない。名鉄は名古屋から河和(こうわ)線の特急で30分ほど。
今回はフリーきっぷ使用だからもちろん名鉄を使った。(ホテル代も名古屋市内の同グレードより安いのでお得)
名鉄の「特急」は乗車券だけでも乗れる。ただ、混雑時間帯に大荷物を持って乗るのは気が引けるので、「特別車」に乗ってみた。名鉄の特急や快速特急には2両の特別車が連結されていて、窓口やタッチパネル券売機で「μ(ミュー)チケット」を買うと座席指定が受けられる。距離に関係なく一律350円。
特別車の英語表記は「FIRST CLASS CAR」
セントレア開業に合わせて導入された新しい「2200系」電車。JRの特急と同レベルの座席や設備で快適。車内は明るく、通路ドア上の文字情報表示がLEDでなく液晶ディスプレイなのが目新しかった。
特別車車内
利用者はけっこういたが、短距離で本数が多いためか、直前に買って飛び乗る人が多い感じ。車掌がうやうやしく車内検札に来たが、乗り慣れた人たちは座席前の「チケットホルダー」にチケットを入れたまま。車掌も当たり前のように、ホルダーをのぞき込むだけ。僕は手に持って提示したが、やはり見るだけでスタンプなど押さないし、乗車券は確認しない(自動改札完備だから問題はないけど)。お互いに楽だからそういう習慣になったのだろうけど、ちょっと味気ない。
名鉄の駅は「知多半田」駅
駅前のホテルに荷物を置いて、夕暮れの町を歩く。(画像が暗いのでご了承ください)
駅前は最近小ぎれいに整備された感じ
知多半田駅前からまっすぐの通りを西へ400メートルほど進むと、線路をくぐる。これがJR武豊線。
左折するとJRの「半田」駅。こちらは「知多」が付かない
アジサイがもう咲きそう
この辺りまではよくある地方都市の風景。
奥の黒いビルを覚えておいてください
さらに300~400メートル西へ進むと、「半田運河」に出る。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/3c/bba73ed94584ff3f039a935074e9819a.jpg)
両岸に黒い板壁の倉庫のようなものが500メートルほどに渡って並んでいる
白でかかれた大きなマークは「ミツカン」
半田市には「中埜酢店(なかのすみせ)」などミツカングループ本社と工場がある。そしてこの黒い倉庫は、今も現役の工場。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/50/e5786b073523a06731337204858f5793.jpg)
ミツカングループのサイトによれば、1804(文化元)年に米でなく酒粕から酢を作ることに成功して創業。1811(文化8)年に半田工場開設とのこと。
200年前のものが今も現役とはすごい
電線を見えないようにするなど、この一角は運河と倉以外のものは目に入らないほど景観に配慮されている。
でも、運河を渡って倉を結ぶパイプラインがあったり、倉から社員が出入りしたり(現代的なセキュリティシステムがある模様)、たまに車が通ったりするのは現役ならでは。何よりも酢の匂いが辺りを漂う。ミツカン酢の瓶のフタを開けた時と同じ香り。環境省の「かおり風景100選」にも選定されている。
だいぶ暗くなったが、運河を背にして駅方向
手前の黒い倉庫(厳密には「ミツカンサンミ」というグループ会社の工場)の隣の一般家屋風の建物は「博物館『酢の里』」というミツカンの展示・見学施設(要予約なので行かなかった)。その奥、車が駐まっている3階建ての建物は戦前チックな外観だが、新しい「mizkan」ロゴ(2004年までは「Mitsukan」だった)の看板を掲げる現役の「ミツカングループ中央研究所」。元は中埜家出資の「中埜銀行」(流れを汲むのが今のUFJ銀行)の本店で1925(大正14)年建築とのこと。
さっきから見えているいちばん奥のビルは1992年竣工のミツカングループ本社。古い建築物と色合いを統一しているのだろう。なんとなく「秋田県庁第二庁舎」っぽくもあるけど。
酢の里前には丸ポスト
一般的な1号ポストだけど「酢の里ぽすと」と表示がある。特殊な消印が押されるとか何かあるのだろうか?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/5d/9e507c2492f4575ba58e24cc4037f465.jpg)
本社ビル前の大通りを渡って北へ進むと清酒「國盛」の看板を掲げた、同じく黒い倉造りの建物。「酒の文化館」というこちらも要予約の展示施設。
1844(弘化元)年創業の酒造会社「中埜酒造」も半田市に本社・工場を置く。同社は一時ミツカングループに属し、今も若干の関係があるらしい。
愛知県といえば豊田市のトヨタは誰もが知っている。でも恥ずかしながら僕はミツカンの創業地が愛知であることはおろか半田市の存在自体知らなかった。
考えてみれば、売上高や世界的知名度ではトヨタが上かもしれないが、日本人にとってはミツカンの方が暮らしに欠かせないのではないだろうか。酢のシェアは相当だろうし、味ぽん、追いがつおつゆ、おむすび山、金のつぶ納豆のどれも食べたことがないという日本人はいないのではないだろうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/b6/66a2048d2777544374dd249d7f761e8f.jpg)
近くにはほかにも歴史的な建造物があるそうなので、改めてじっくり見てみたい。
泊まったホテルのフリードリンクコーナーに地元製品ということでミツカンの酢のドリンク「さらっと○○酢」シリーズがあったので、初めて飲んだけど、とってもおいしかった。もう少し安いといいけどね。
NTT前のステンドグラス「ごんぎつね」(平岡和広 作)
中央左にキツネがいる。半田市は「新美南吉(にいみなんきち)の出身地」としても有名。「ごん狐」「手袋を買いに」「おぢいさんのランプ」「花のき村と盗人たち」(いずれも作品名はオリジナル表記)などの作者だ。
記念館や生家、ごんぎつねの舞台とされる川などは知多半田駅から2つ名古屋寄りの「半田口」駅周辺にある。普通列車しか止まらない駅でもあり、行くことができなかったが、こちらもいつか見てみたい。
JRの半田駅前にこんなものも
「知多酪農発祥の地」
明治期の話だが、これも中埜家が関わっているようだ。
【7月11日追記】2日にミツカン半田工場が今年度中に規模縮小・他工場へ移管されることが発表された。古い建物で設備更新に限界があるのも理由のようだが、跡はどうなるのか? 保存はしてくれるだろうが、うまく活用できるだろうか。
ひょんなことから、今回の旅行の宿泊地になった。名古屋市の南、知多半島の中央にある人口約12万の都市。周辺には、中部国際空港(セントレア)と焼き物で有名な常滑市、騎手と同姓同名(?)の武豊町(たけとよちょう)、隣接してはいないが半島先端部には「南セントレア市」と名付けられそうになったが立ち消えになった町などがある。
鉄道はJRと名古屋鉄道(名鉄)が通っている。JRでは東海道本線の大府(おおぶ)駅で武豊線というディーゼルカーに乗り換えが必要(一部は直通)で、名古屋方面からは遠回りで本数も少ない。名鉄は名古屋から河和(こうわ)線の特急で30分ほど。
今回はフリーきっぷ使用だからもちろん名鉄を使った。(ホテル代も名古屋市内の同グレードより安いのでお得)
名鉄の「特急」は乗車券だけでも乗れる。ただ、混雑時間帯に大荷物を持って乗るのは気が引けるので、「特別車」に乗ってみた。名鉄の特急や快速特急には2両の特別車が連結されていて、窓口やタッチパネル券売機で「μ(ミュー)チケット」を買うと座席指定が受けられる。距離に関係なく一律350円。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/b0/e3a3c948d4b7af6217751fce576301f8.jpg)
セントレア開業に合わせて導入された新しい「2200系」電車。JRの特急と同レベルの座席や設備で快適。車内は明るく、通路ドア上の文字情報表示がLEDでなく液晶ディスプレイなのが目新しかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/ec/bd04c94b0b0e5df0b945124d0410c0ca.jpg)
利用者はけっこういたが、短距離で本数が多いためか、直前に買って飛び乗る人が多い感じ。車掌がうやうやしく車内検札に来たが、乗り慣れた人たちは座席前の「チケットホルダー」にチケットを入れたまま。車掌も当たり前のように、ホルダーをのぞき込むだけ。僕は手に持って提示したが、やはり見るだけでスタンプなど押さないし、乗車券は確認しない(自動改札完備だから問題はないけど)。お互いに楽だからそういう習慣になったのだろうけど、ちょっと味気ない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/0a/f4ca4ff10bb6987c5ec2ecdc39245592.jpg)
駅前のホテルに荷物を置いて、夕暮れの町を歩く。(画像が暗いのでご了承ください)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/53/4287282e639a148aa2d668651ca4ca91.jpg)
知多半田駅前からまっすぐの通りを西へ400メートルほど進むと、線路をくぐる。これがJR武豊線。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/42/dbebb5104b752821ebc27094865a6bef.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/c8/2f1e750e13672f6a93eda2fedbbb2dec.jpg)
この辺りまではよくある地方都市の風景。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/ad/22adc7bea2bc7317f8e1801ba52186f2.jpg)
さらに300~400メートル西へ進むと、「半田運河」に出る。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/3c/bba73ed94584ff3f039a935074e9819a.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/39/43b34badbef0f1fe3a90de12aa78f2ec.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/36/80149b0b2103c608adcfb967632e39ac.jpg)
半田市には「中埜酢店(なかのすみせ)」などミツカングループ本社と工場がある。そしてこの黒い倉庫は、今も現役の工場。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/50/e5786b073523a06731337204858f5793.jpg)
ミツカングループのサイトによれば、1804(文化元)年に米でなく酒粕から酢を作ることに成功して創業。1811(文化8)年に半田工場開設とのこと。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/32/4fb571d7708815afb1a621cd9fd388d9.jpg)
電線を見えないようにするなど、この一角は運河と倉以外のものは目に入らないほど景観に配慮されている。
でも、運河を渡って倉を結ぶパイプラインがあったり、倉から社員が出入りしたり(現代的なセキュリティシステムがある模様)、たまに車が通ったりするのは現役ならでは。何よりも酢の匂いが辺りを漂う。ミツカン酢の瓶のフタを開けた時と同じ香り。環境省の「かおり風景100選」にも選定されている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/91/37d0fe66af226bc0575b0dd81e81a9f7.jpg)
手前の黒い倉庫(厳密には「ミツカンサンミ」というグループ会社の工場)の隣の一般家屋風の建物は「博物館『酢の里』」というミツカンの展示・見学施設(要予約なので行かなかった)。その奥、車が駐まっている3階建ての建物は戦前チックな外観だが、新しい「mizkan」ロゴ(2004年までは「Mitsukan」だった)の看板を掲げる現役の「ミツカングループ中央研究所」。元は中埜家出資の「中埜銀行」(流れを汲むのが今のUFJ銀行)の本店で1925(大正14)年建築とのこと。
さっきから見えているいちばん奥のビルは1992年竣工のミツカングループ本社。古い建築物と色合いを統一しているのだろう。なんとなく「秋田県庁第二庁舎」っぽくもあるけど。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/a1/0ec7d368b9cd4831b2a408696642ff05.jpg)
一般的な1号ポストだけど「酢の里ぽすと」と表示がある。特殊な消印が押されるとか何かあるのだろうか?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/5d/9e507c2492f4575ba58e24cc4037f465.jpg)
本社ビル前の大通りを渡って北へ進むと清酒「國盛」の看板を掲げた、同じく黒い倉造りの建物。「酒の文化館」というこちらも要予約の展示施設。
1844(弘化元)年創業の酒造会社「中埜酒造」も半田市に本社・工場を置く。同社は一時ミツカングループに属し、今も若干の関係があるらしい。
愛知県といえば豊田市のトヨタは誰もが知っている。でも恥ずかしながら僕はミツカンの創業地が愛知であることはおろか半田市の存在自体知らなかった。
考えてみれば、売上高や世界的知名度ではトヨタが上かもしれないが、日本人にとってはミツカンの方が暮らしに欠かせないのではないだろうか。酢のシェアは相当だろうし、味ぽん、追いがつおつゆ、おむすび山、金のつぶ納豆のどれも食べたことがないという日本人はいないのではないだろうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/b6/66a2048d2777544374dd249d7f761e8f.jpg)
近くにはほかにも歴史的な建造物があるそうなので、改めてじっくり見てみたい。
泊まったホテルのフリードリンクコーナーに地元製品ということでミツカンの酢のドリンク「さらっと○○酢」シリーズがあったので、初めて飲んだけど、とってもおいしかった。もう少し安いといいけどね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/3f/cc8516133723c649f082d8a1ccaa39e8.jpg)
中央左にキツネがいる。半田市は「新美南吉(にいみなんきち)の出身地」としても有名。「ごん狐」「手袋を買いに」「おぢいさんのランプ」「花のき村と盗人たち」(いずれも作品名はオリジナル表記)などの作者だ。
記念館や生家、ごんぎつねの舞台とされる川などは知多半田駅から2つ名古屋寄りの「半田口」駅周辺にある。普通列車しか止まらない駅でもあり、行くことができなかったが、こちらもいつか見てみたい。
JRの半田駅前にこんなものも
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/2e/070421127e4e5a4a1130b3cfd481cc83.jpg)
明治期の話だが、これも中埜家が関わっているようだ。
【7月11日追記】2日にミツカン半田工場が今年度中に規模縮小・他工場へ移管されることが発表された。古い建物で設備更新に限界があるのも理由のようだが、跡はどうなるのか? 保存はしてくれるだろうが、うまく活用できるだろうか。