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加賀谷書店と和民

2012-10-25 23:26:12 | 秋田のいろいろ
秋田市中心部に店を構える大きな書店といえば、昔は「加賀谷書店」と「三浦書店」。現在は三浦書店は廃業し、加賀谷書店だけが残っていた。
一方で、近年、秋田駅周辺にはジュンク堂書店秋田店(2007年。650坪)や宮脇書店秋田本店(2011年。750坪)という大型書店が進出していた。

そんな中、秋田駅前にある加賀谷書店の本店が、11月7日で閉店することになった。※駅前の店を閉めるだけであって、2つの他店舗や会社そのものは存続
広小路の向かい側から見た加賀谷書店本店(中央の建物)
青森では書店のことを「本店」という場合があるので、その感覚だと「書店本店」がおかしく感じてしまうかも。
ちなみに、右隣の「竹谷本店」は本屋じゃなく貴金属店。しかも「支店」に対する「本店」の意味でもなく、そういう企業名。この店は「竹谷本店広小路店」らしい。秋田には「竹屋◯◯」を名乗る貴金属店が複数ある(この記事後半)ので、その区別かと思われる。

加賀谷書店本店は秋田駅西口から300メートル弱の広小路に面している。
広小路側
L字型の店舗で、広小路側の間口は狭いが、こちらがいちおう正面らしい。
店舗東側のビューホテル搬入口と向き合う、細くてごちゃごちゃした市道側にも出入口がある。
青い柱の奥が出入口(手前の自販機付近のドアは使っていない)

10月17日付秋田魁新報4面・経済面によれば、加賀谷書店本店は「1955年ごろ現在地にオープン」「1、2階合わせ528平方メートルの売り場(注・約160坪)」。
大型書店の進出後の「2011年度の売り上げは20年ほど前の約4分の1程度になった」そうで、社長は「(前略)大手にはかなわなかった。チャンスがあれば新たな出店も考えたい」と話している。

広小路側に10月15日付で「店主」名の「閉店のお知らせ」が大きく出ていた(市道側は小さい張り紙)
通りがかってこのお知らせを目にして「おおっ!」と派手に驚いている人がいた。

加賀谷書店本店は、10年ほど前だったか、一時期仮店舗(金萬ボウルのビルの1階だったか)に移転して、その間に店をきれいにしたことがあった。
2階の窓は古そうだし全体的なデザインも昔と変わっていないようなので、解体・新築したのではなく、リフォームしただけだったのだろう。そういえばリニューアル開店後の店内は、建材によるものか独特の臭いが強く漂っていた。


加賀谷書店がなくなれば秋田駅西口周辺の書店は、上記大型2店舗のほかは駅ビルトピコの「ブックスささき」だけだろうか。
一定の品揃えがあり、地元書店であった加賀谷書店本店の閉店を惜しむ声も多い。

けれども、個人的には、こういう状況である以上はやむを得ないと思う。
地方都市の地元書店が生き残ることが厳しいのは、他都市を見て分かっていた。先日も書いたように、弘前市の「今泉本店(この“本店”は“書店”の意味ですよ)」は2000年に廃業している。
それに、一時期秋田市御所野にもあった「戸田書店」は静岡市清水が本拠地。清水では加賀谷書店のような位置づけの書店のようで、清水駅やさくらももこの生家から遠くない商店街に、本社と「清水本店」があった。
再掲)戸田書店清水本店
しかし、2011年1月に店舗としては閉店。本社機能だけが残った。(一方で、静岡の中心部には新しい大型店を出したりしているようだが)
全国的にそんな流れの中、大型書店が2つもできた秋田駅前なのだから、閉店するというのには驚かなかった。


それから、今となっては、店舗の立地で恵まれなかったのかもしれない。
木内など広小路の西側が賑やかで人の流れがあった時代であれば、秋田駅から広小路西側へ行く途中にある加賀谷書店は通りがかりに入りやすい立地だったはずだが、そちらが寂れてしまった今は、わざわざ足を向けて行かないとならない場所になってしまったのも、客が減った原因かもしれない。アーケードもなく、悪天候の時は面倒な場所でもある。
ジュンク堂も宮脇書店もビルの5階以上の高層階だが、距離的にはより駅に近く、駅からほとんど(あるいはまったく)屋外に出ずにたどり着けるのでその意味では行きやすいこともあるだろう。


さらに、加賀谷書店にとって、本店の売り上げがどの程度を占めていたのだろうか。
加賀谷書店の本社は手形陸橋の下にあって、外商部がある。大きな企業や役所を回っているので、けっこうな売り上げがありそうだし、高校の教科書などの販売もある。こうした外商のほうが、加賀谷書店の売り上げに貢献していそうな気がする。(新学期の高校の教科書販売って、アトリオンとか別会場でやるんだっけ? それなら、本店閉鎖の影響は少なそう)
不採算部門として本店を閉めてしまうのは、企業が生き残るにはやはり仕方ないのだろう。



では、加賀谷書店本店がなくなった後の建物はどうなるのかと思っていたら、24日の魁4面・経済面。
その「加賀谷書店本店ビル」(っていう名前なのね)に、秋田県初出店となる居酒屋「和民」が出店することを、23日に運営会社のワタミが発表したことが出ていた。
1階のみを使用する約260平方メートル、150席。
ワタミは現在44都道府県に出店していて、未出店は福井、高知、秋田。残り3県にも出店することになったようだ。

和民が秋田にできるという噂は前からあったので、これも驚きはしなかった。
でも、老舗書店だったところが居酒屋チェーンになると思うと、時代も変わったなと感じてしまう。
あと、どういう流れか知らないが、書店閉店→和民進出と、ずいぶんとスピーディに話が進んだものだ。


それにしても、ここ10年くらいだろうか、秋田駅前はずいぶんと居酒屋を始めとする飲食店が増えたものだ。
秋田駅方向を見る。右側2件目が加賀谷書店
加賀谷書店本店の斜め向かいの昔サークルKがあったビルもそうだし、向かい(ホテルハワイの東隣)に建設中のビル(=上の写真左側)も飲食店が入るらしい。そこから秋田駅に向かう途中にも、たくさんの新しい居酒屋ができた。
旅行客向けに秋田らしい飲食店があるならまだしも、全国チェーンの居酒屋ばかりが駅前に集結してもあまり意味がないし、やっていけるのだろうか。

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コメント (15)
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