広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

町中の油田

2012-10-10 23:25:01 | 秋田の地理
先日、秋田県由利本荘市で国内で初めて「シェールオイル」が試験採取されたように、秋田は油田地帯。
秋田市内にもいくつかの油田があり、「八橋(やばせ)油田」は昭和30年代までは国内最大の産出量だったという。
秋田市北部(八橋地区に限らず)などでは、現在も細々と石油が採掘されている。


昔は「やぐら」を組んで採っていたそうだが、僕が物心ついた頃には少なくなっていたようで、実物を見たことはない。(八橋地区の隣であり油田がある市立寺内小学校の校舎は、そのやぐらをデザインに取り入れている。)

現在(昭和末期以降)は、主にこのようなもので採掘している。
これ
天秤かシーソーのように、ぎったんばったんと動く装置で、汲み上げている。
これが田んぼの中や住宅の間に1~3台くらいずつ立っているのだ。

この装置の名称を僕は「ポンピングユニット」だと思っていた。
秋田大学鉱業博物館のホームページ(http://www.mus.akita-u.ac.jp/exhibits/exhibitsoutdoorJ.html)では「石油の汲み上げ用ポンプ(ポンピングユニット」とあるので、間違いではなさそう。

秋田市八橋の住宅地の中にある、国際石油開発帝石株式会社「秋田鉱業所」の裏手(ショッピングモール「パブリ」の裏)にもポンピングユニットが数台稼働していて、その柵に説明が出ている。

掲示によれば、八橋油田は1934(昭和9)年に発見され、累計生産量は原油560万KL、天然ガス12億立方メートル。現在は原油42.0KL、天然ガス23500立方メートルが生産されている。
井戸は1240本が掘られ、現存は48本。
石油だけでなく、天然ガスも採れるのだった。秋田市内に供給される東部ガスの都市ガスには、秋田産の天然ガスも一部使われていると聞いたことがある。

別の説明では汲み上げ装置の解説もあり、帝石ではこの装置を「サッカーロッドポンプ」と呼んでいるようだ。(そういう名前の方式の装置ということか)
「自噴しなくなった原油生産井に取り付けられ、原油をくみあげます。」
「内部の装置は複雑」「世界の油田で広く使われています。」
とのこと。
説明が専門的でうまく理解できないけれど、ものすごく簡単に言えば、井戸水を汲むポンプのような仕組みで、電動でポンプを動かしているようだ。


ここでは、ポンピングユニットの外観に注目したい。
僕が子どもの頃は、全部が上の方の写真にあったタイプだったと思う。
(再掲)
写真では、右の箱状の部分が板がむき出しになっているが、本来はそこも水色に塗られ、左側の黄色い部分も水色で、水色の単色だった。

その後、変化があった。
手前と奥の2台
まず、写真手前の装置。
若干スマートになり、頭や逆側地面の回転部分が黄色く塗られるようになった。作動していることを確認しやすいよう、視認性を高めたのだろうか。
多くのポンピングユニットがこのタイプに変わったはずだが、上の旧タイプのように色だけ塗り替えたものも存在する(秋田大学鉱業博物館に展示されている装置も旧型の塗り替え仕様)。


さらにいつの頃からか、上の写真奥のような黒とオレンジの塗装の装置が多くなった。
構造は変わっていないように見受けられるが、随分と地味な色にしたと思った。
3世代の装置が並ぶ
※上記、帝石裏手には、後にちょっとした変化があった。


さて、2009年春の時点では、水色と黄色の塗装の装置が2台稼働していた場所(「基地」と呼ぶようだ)があった。
住宅地の中
それが、先日久しぶりに見ると、こうなっていた。
黒っぽい?
装置の位置や構造は変わっていないように見えるが、色が変わっていた。柵の色も同色になった。
よく見ると、
2台で色が違う
1台は従来通りの黒だが、もう1台は焦げ茶色で、まだピカピカ。どちらもオレンジ色の部分が前より狭くなったようだ。

焦げ茶色の方には、
「LUFKIN」
最近ロゴマークを変えた某ローカルテレビ局のようなデザインで「LUFKIN」というロゴが入っている。
上のほうの写真の黒い装置にも色使いは違うが同じ名称が入っている。

どうも、アメリカテキサス州にある、こういう機械のメーカーらしい。
日本にあるポンピングユニットは、てっきり日本のなんとか重工あたりで製造した装置かと思っていたが、アメリカ製だったとは。

黒と焦げ茶
ここの基地は、柵のすぐそばで装置が稼働していて、間近で観察できる。
これが原油を汲む「サッカーロッドポンプ」か

アメリカンな「DANGER」。もちろん触ってはいけないし、可動部に近づいては危険

柵の中は立入禁止・火気厳禁。これは和風

焦げ茶のほうは「DANGER」の表示も新しそうだから、装置自体を新品にしたのだろうか?


柵の中は火気厳禁だけど、柵の外では特に規制はない。低いモーターの音が響き、若干石油の臭いがすることもある。(秋田では温泉のお湯で同系統の臭いがするものがある)
組み上げた原油は、地下のパイプラインでプラントへ送られるそうだ。

住民にとっては日常の風景だけど、全国的にはとても珍しい光景が秋田市で見られるのでした。※続きが少々あります

【2020年6月2日追記】組み上げ装置の呼び名について。
2014年に秋田市教育委員会が発行した「秋田市文化財イラストマップ「八橋・川尻地区編」」では、「採油機(ポンピングユニット)」の見出しで、文中で「別名「ウマヅラ」・「ホースヘッド」」としている。ウマヅラ、ホースヘッドの詳細の記述はないが、形を馬に見立てたのは想像がつく。
そしてやはり、一般的にはポンピングユニットと呼んで差し支えなさそう。
ネットにはそのような記述はほとんどないが、「日経サイエンス」2010年3月号のサイト「石油資源を搾り出す(L. マウゲーリ(伊エニ社))」には、「カリフォルニア州のセントラルバレーで,8000基を超すホースヘッドポンプ(昔ながらの油田労働者はこの装置をそう呼ぶ)がゆっくりと上下に動き」とあった。
Wikipediaの「油井」項内、「サッカーロッド・ポンプの概略図」の図では、ポンピングユニットの先端の大きく動く部分が「ホースヘッド」という部品だとしている。
【2020年12月27日追記】「ポンプジャック」の呼び方もあるらしい。
コメント (6)
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