20日付秋田魁新報の社会面・33面に「本県の導入率1.1% ノンステップバス/各社は慎重姿勢」という5段組み記事が出た。
毎年発表されるデータで、傾向は変わらないし、今年の話もどこかで既に知っていたので特に目新しい話題ではない。
新たな情報としては、
「(秋田県内のバス運行)各社によると、ノンステップの中古は安いもので100万円以下だが、年式が新しいものは新車並みの2千万円近く。」「新車購入には国、県で上限1500万円の補助がある」
といった程度。
中古でもずいぶんと価格に幅があり、場合によっては補助金で新車を買ったほうが安くなるのか。(記事中にもあるように、補助金購入車は運用する路線が制限されるという制約はある)
で、この魁の記事では、ある点について一切触れていない。
それは「秋田中央交通では、(小田急バスの)中古ノンステップバスを大量に導入している」ということ。
記事中では、「秋田中央交通(秋田市)が定員55人の中型3台を運行する」とあり、3台しかノンステップバスがないと受け取れる。
※この3台とは新国道経由追分方面の路線で使われる「818」「819」「904」を指していると考えられる。
また、見出しにもあるように記事全体として、秋田中央交通を含む秋田のバス会社は、どこも中古を含めたノンステップバス導入に消極的と取れる内容。
ところが、当ブログで以前から取り上げているように、秋田中央交通では小田急の中古のノンステップバスを、おそらく13台(中型12、大型1)も導入しているのだ。
国交省の統計の調査日である昨年度末の時点でも、5台(865、866、870、871、896)の導入を確認しているのに、どうしてそれを無視してしまっているのだろう。
さらに、新聞記事には写真が出ている。
秋田中央交通臨海営業所で撮影した、ノンステップバスの中ドアが開いている写真。(中ドア付近のアップなので、ナンバーは確認不可能)
この写真のバスは、「座席が無地でエメラルドグリーンであること」と「車内の握り棒が黄色と茶色であること」から、新車の3台ではなく小田急バスの中古車の1台だ。
※余談ですが、さらに「ドアが引き戸(ぐるんと開くのでなく)」で「臨海営業所所属」から判断すれば今年5月上旬に初めて見た「915」の可能性が高い。(改めて見ると、中古中型12台のうち865、866、915以外は全部秋田営業所所属であり、偏っているのに気づいた)
新車ノンステップ3台は臨海営業所に所属しているため、本社に問い合わせるなどしてそのことを知った魁の記者が営業所へ撮影しに行ったら、3台とも出払っていて、やむなく中古ノンステップを撮影したのだろうか?
ともかく、写真を撮ったのだから魁側でも中古ノンステップの存在は目に入っていたことになる。なぜ、そのことに記事で触れなかったのだろう。
いずれも再掲
新車(左)と中古(右)のノンステップバスに外見上の違いは少ない。
小田急中古のノンステップバスのことは抹殺したいかのようにも取れる魁の記事。
その理由というか原因は、国土交通省の10月5日付リリース「平成23年度末 自動車交通関係移動等円滑化実績等について(http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha03_hh_000127.html)」を見ると、分かってきた。
簡単にまとめると、国土交通省の調査は単なる「ノンステップバスの台数(およびその割合)」ではなく、「移動円滑化基準(バリアフリー新法)適合車両の導入状況」の調査なのだった。
バリアフリー新法は2006年末施行で、ノンステップバスはそれ以前から存在しており、中央交通に来た小田急中古も以前のもの。
そのような基準に適合しないノンステップバスは、今回の調査においてノンステップバスのカウントから外れていたことになる。
一方で、「ノンステップバスではないけれどバリアフリー新法適合」という車両(=主にリフトやスロープの付いたワンステップ車か)もあり、実は今回の調査では、その数も調査されていた(ノンステップバス台数はその内数として掲載)。
それによれば、秋田県内ではバス総数615台のうち117台、秋田中央交通(子会社のトランスポート分を除く)では234台中51台が適合となっている。このことについても、魁では触れておらず、あたかもノンステップバスだけの調査かのように見えてしまう。
ちなみに青森市営バスは174台中40台(ノンステップ2)、弘南バスは269台中34台(ノンステップバス0)。
したがって、
国土交通省の調査は「ノンステップバス以外も含む基準適合車の数」だったのに、
魁の記事はノンステップバスだけに着目しているから実質的に「基準適合車のノンステップバスの数だけ」について書いていて、
さらに書き方(基準適合うんぬんには触れていない)からすれば読者には「基準適合外も含むノンステップバスの数」かのように読み取れるものだった。
基準に適合していないからといって、大きな問題があるようには見えない(相違点は座席や棒の配置程度)のだから、多少なりともバリアフリーに貢献していることは間違いない。その存在を完全に無視してしまうのはいかがなものか。
国の調査結果はそのまま掲載するにしても、ただし書き程度でも「この調査は基準に適合した車両数だけを対象にしたもの。秋田県内の一部では基準制定前製造の中古ノンステップバスを導入する動きもある」ことに触れるべきだったのではないだろうか。
こんな記事になったのは、記者が何も(深く)考えなくて表面的なものになってしまったのか、あるいは何らかの意図があってこんな記事になったのか。
最近は一部新聞社・通信社が妄想癖の激しい研究者に踊らされたし、以前からのエネルギー政策や政治などの報道を見せられると、報道を鵜呑みにすることがあってはならないし、それを見極める能力が試されているように思えてしまう。
国土交通省がまとめた3月末現在のノンステップバス導入率が、全国平均29.9%、県別では愛知62.5%、東京62.0%の順で高く、最下位は青森の0.8%、秋田は下から2番目の1.1%だった。
導入率の低さについて、秋田県内で路線バスを運行する3社では、雪道に適さないこと、購入費捻出が困難であることを理由に挙げている。
という内容。導入率の低さについて、秋田県内で路線バスを運行する3社では、雪道に適さないこと、購入費捻出が困難であることを理由に挙げている。
毎年発表されるデータで、傾向は変わらないし、今年の話もどこかで既に知っていたので特に目新しい話題ではない。
新たな情報としては、
「(秋田県内のバス運行)各社によると、ノンステップの中古は安いもので100万円以下だが、年式が新しいものは新車並みの2千万円近く。」「新車購入には国、県で上限1500万円の補助がある」
といった程度。
中古でもずいぶんと価格に幅があり、場合によっては補助金で新車を買ったほうが安くなるのか。(記事中にもあるように、補助金購入車は運用する路線が制限されるという制約はある)
で、この魁の記事では、ある点について一切触れていない。
それは「秋田中央交通では、(小田急バスの)中古ノンステップバスを大量に導入している」ということ。
記事中では、「秋田中央交通(秋田市)が定員55人の中型3台を運行する」とあり、3台しかノンステップバスがないと受け取れる。
※この3台とは新国道経由追分方面の路線で使われる「818」「819」「904」を指していると考えられる。
また、見出しにもあるように記事全体として、秋田中央交通を含む秋田のバス会社は、どこも中古を含めたノンステップバス導入に消極的と取れる内容。
ところが、当ブログで以前から取り上げているように、秋田中央交通では小田急の中古のノンステップバスを、おそらく13台(中型12、大型1)も導入しているのだ。
国交省の統計の調査日である昨年度末の時点でも、5台(865、866、870、871、896)の導入を確認しているのに、どうしてそれを無視してしまっているのだろう。
さらに、新聞記事には写真が出ている。
秋田中央交通臨海営業所で撮影した、ノンステップバスの中ドアが開いている写真。(中ドア付近のアップなので、ナンバーは確認不可能)
この写真のバスは、「座席が無地でエメラルドグリーンであること」と「車内の握り棒が黄色と茶色であること」から、新車の3台ではなく小田急バスの中古車の1台だ。
※余談ですが、さらに「ドアが引き戸(ぐるんと開くのでなく)」で「臨海営業所所属」から判断すれば今年5月上旬に初めて見た「915」の可能性が高い。(改めて見ると、中古中型12台のうち865、866、915以外は全部秋田営業所所属であり、偏っているのに気づいた)
新車ノンステップ3台は臨海営業所に所属しているため、本社に問い合わせるなどしてそのことを知った魁の記者が営業所へ撮影しに行ったら、3台とも出払っていて、やむなく中古ノンステップを撮影したのだろうか?
ともかく、写真を撮ったのだから魁側でも中古ノンステップの存在は目に入っていたことになる。なぜ、そのことに記事で触れなかったのだろう。
いずれも再掲
新車(左)と中古(右)のノンステップバスに外見上の違いは少ない。
小田急中古のノンステップバスのことは抹殺したいかのようにも取れる魁の記事。
その理由というか原因は、国土交通省の10月5日付リリース「平成23年度末 自動車交通関係移動等円滑化実績等について(http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha03_hh_000127.html)」を見ると、分かってきた。
簡単にまとめると、国土交通省の調査は単なる「ノンステップバスの台数(およびその割合)」ではなく、「移動円滑化基準(バリアフリー新法)適合車両の導入状況」の調査なのだった。
バリアフリー新法は2006年末施行で、ノンステップバスはそれ以前から存在しており、中央交通に来た小田急中古も以前のもの。
そのような基準に適合しないノンステップバスは、今回の調査においてノンステップバスのカウントから外れていたことになる。
一方で、「ノンステップバスではないけれどバリアフリー新法適合」という車両(=主にリフトやスロープの付いたワンステップ車か)もあり、実は今回の調査では、その数も調査されていた(ノンステップバス台数はその内数として掲載)。
それによれば、秋田県内ではバス総数615台のうち117台、秋田中央交通(子会社のトランスポート分を除く)では234台中51台が適合となっている。このことについても、魁では触れておらず、あたかもノンステップバスだけの調査かのように見えてしまう。
ちなみに青森市営バスは174台中40台(ノンステップ2)、弘南バスは269台中34台(ノンステップバス0)。
したがって、
国土交通省の調査は「ノンステップバス以外も含む基準適合車の数」だったのに、
魁の記事はノンステップバスだけに着目しているから実質的に「基準適合車のノンステップバスの数だけ」について書いていて、
さらに書き方(基準適合うんぬんには触れていない)からすれば読者には「基準適合外も含むノンステップバスの数」かのように読み取れるものだった。
基準に適合していないからといって、大きな問題があるようには見えない(相違点は座席や棒の配置程度)のだから、多少なりともバリアフリーに貢献していることは間違いない。その存在を完全に無視してしまうのはいかがなものか。
国の調査結果はそのまま掲載するにしても、ただし書き程度でも「この調査は基準に適合した車両数だけを対象にしたもの。秋田県内の一部では基準制定前製造の中古ノンステップバスを導入する動きもある」ことに触れるべきだったのではないだろうか。
こんな記事になったのは、記者が何も(深く)考えなくて表面的なものになってしまったのか、あるいは何らかの意図があってこんな記事になったのか。
最近は一部新聞社・通信社が妄想癖の激しい研究者に踊らされたし、以前からのエネルギー政策や政治などの報道を見せられると、報道を鵜呑みにすることがあってはならないし、それを見極める能力が試されているように思えてしまう。