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一丁目一番地

2012-10-04 23:53:37 | 秋田の地理
自公民3党首が8月8日に「近いうちに」衆議院を解散すると合意したはずなのに、10月になってもその気配はない。
政治家の使う言葉って、日本語だけど我々一般庶民のとは違う言葉なのかもしれない。

政治家の使う言葉で気になるものは、ほかにもいろいろある。個人的には「一丁目一番地(一丁目一番地政策)」がその1つ。
秋田県のサタケ知事も、たしか秋田市長当時から使っていたと記憶している。

9月29日付秋田魁新報3面・総合面の「県議会記者席」欄によれば、県議会総括審査において、ある県議が知事へ県政運営の自己評価を質問した中で、秋田県庁の所在地は秋田市山王“四丁目”であるが、知事の一丁目一番地政策が「『四丁目』にならないようお願いしたい」と「皮肉交じりのエールを送った」そうだ。


「デジタル大辞泉」には「一丁目一番地」の項があり、「最初に実施すべき最重要な事柄をたとえていう。最優先課題。」とある。
だったらそんな「たとえ」なんか使わず、「最優先課題」と言えばいいんじゃないだろうか?

屁理屈っぽくなるが、「丁目」「番地」といわれれば、ストレートに実際の住所を連想してしまう。
「一丁目一番地」がいちばん大事だというのなら、「二丁目」以降あるいは「一丁目二番地」以降はさほど重要でないということなのか?
それじゃあ、丁目や番地による“差別”じゃないのか!


日本経済新聞のサイト内「ことばオンライン」に、2011年2月8日付けで「最近よく聞く「一丁目一番地」ってどこ?(http://www.nikkei.com/article/DGXBZO22657250R00C11A2000000/)」という記事があり、詳しく説明されていた。
それによれば、
「2009年10月にデジタル大辞泉(小学館)に収録された」が、「新聞紙面では1980年代から見られる語」で、橋本龍太郎内閣の時には既に使われていたようだ。

もともとは意味や用法が少し異なり、
「国会の本会議場で当選回数の若い議員ほど前に座る慣習があり、演壇に近い前列の席を「一丁目一番地」と呼びならわしてきた」
「霞が関でも、旧通商産業省などから出た用法で、予算で前面に押し出す目玉政策を指して「一丁目一番地」と表すことがある」
そして、
「09年の政権交代以後、鳩山由紀夫首相」がよく使って、新聞や一般で広く使われるようになった。」
という経緯があるそうだ。
※サタケ氏の市長就任は2001年、知事就任は2009年

記者のコメント的なものでは、
「(永田町や内幸町など)1丁目1番地はいわゆる「一等地」の場合が多く、「一丁目一番地」には重要なもの、原点というイメージがあるのかもしれません。」
というイメージ的な意味合い、また、
「2番地、3番地と続いていく順番をイメージしやすく優先順位を表現するのに便利」、「「一」「一」と韻を踏んでリズムがよい」
など、語感や語呂の良さもあるのではないかとしていた。


僕には「“一丁目一番地”は一等地・重要な場所」という発想がなく、それが「一丁目一番地」という言葉に対する違和感の根源のような気がする。
以前、丁目の法則として、「秋田市の“一丁目”は、その町名の発足時点で、秋田市役所もしくは土崎支所(現在は廃止)にいちばん近い側である」というのを紹介した。
秋田市の「一丁目」は単に位置が市役所側というだけで、いわば「町の端っこ」とも言える場所。
秋田市の番地の順、1番地の位置については、明確な法則はなさそうで、その町(丁目)のどこかの角(隅っこ)から順に振られるだけのようだ。
たまたま、「1」が振られただけの場所なんだから、特に重要な場所なわけはない。他の都市でも似たような状況だろう。


具体例。例えば、秋田市山王一丁目1番地。
1番1号が秋田市役所で、ある意味秋田市の中心ではあるが、取り立てて一等地ではない。
上記県議会でのやり取りの通り、市役所より需要な【8日訂正】重要なはずの県庁のほうが、“格下”の「四丁目1番地」にある。

例えば、秋田市大町一丁目1番地。
大町は碁盤の目状の町割りで、北(保戸野通町側)から南(旭南側)に向かって丁目が進み、東(旭川沿い)から西に向かって番地が進む。
再掲)左が大町一丁目1番地、右が2番地。左の建物の裏はすぐ旭川
旭川を背に、星辻神社前の「川反通り」に面した細長い場所が、大町一丁目1番地。
通町橋のたもと。橋と道路の間に細長く1番地が続く
通町橋たもとのかまぼこ屋さんが、大町一丁目1番1号。
西へ向かって2番地、3番地…と続く

例えば、秋田市中通一丁目1番地。
中通は一丁目から七丁目まであり、七丁目にある秋田駅はかなり“格下”ということになってしまう。
「中通一丁目」が由来の「エリアなかいち」は一丁目4番地、キャッスルホテルと木内は一丁目3番地。
一丁目1番地はさぞかしご立派なものがある場所かといえば…
こんなもん(産業会館跡地とベルドゥムールランドマーク秋田)
中通一丁目1番地は、木内の駐車場、高層マンション「ベルドゥムールランドマーク秋田」、秋田県産業会館解体後も長らく「産業会館跡地」と呼ばれ続けている空き地がある場所。おそらく、産業会館跡地が一丁目1番1号。
かつては、産業会館があり、マンションの場所には「協働社(デパートとスーパーの中間みたいな店。秋田市中心部のにぎわいの1つであった)」があったけれど、今はこんなありさまの一丁目一番地。

秋田に限らず、東京だって、国会議事堂は「永田町一丁目7番地」、都庁は「西新宿二丁目」だから、同じこと。一丁目一番地だからってエライわけじゃないし、そうでないからといってどうってもんじゃない。


それから、「地獄の一丁目」という慣用句があり、「きわめて恐ろしい所のたとえ。また、破滅や困難に陥りかける始まり。(デジタル大辞泉)」という意味。
一丁目はほんの序の口というニュアンスもあり、二丁目や三丁目のほうがもっと怖そうだ。

政治家のセンセイ方はいいと思っておられるのだろうが、やっぱり「いちばん大事なこと」の意味で「一丁目一番地」という言葉を使うことはピンと来ない。



政治のことは置いておいて、作品中などで丁目や番地が出てくる時は、「3」が多いような気がしないでしょうか。
・「夕日町三丁目」が舞台の「ALWAYS 三丁目の夕日」
・1980年代にフジテレビで日曜19時に放送された、いしいひさいちのアニメ「おじゃまんが山田くん」の舞台の「東江戸川三丁目」(初期の主題歌の一節「♪東江戸川三丁目(さんちょうめっ!)」は有名。かな?)
1980年代前半頃【8日訂正】1970年代後半頃(80年代にも放送されたかも)の「おかあさんといっしょ」のおかしな町の人々の暮らしを歌った「へんてこ通り三番地(作詞:柴田洋太郎、作曲:比呂公一)」
・アニメ版「サザエさん」の磯野家・フグ田家の住所も「あさひが丘三丁目」のようだ

「1」だと取ってつけたようだし、「2」だと1音で語呂が悪いし、「4」は縁起が悪いし、「5」以降だと数が大きすぎるし…といった理由で、無難な「3」が選ばれることが多いのだろうか。
政治にどんなことを求めるかは人それぞれ。「三丁目三番地政策」でも、いいんじゃないでしょうか…(「イッ丁目イチ番地」よりも、「サン丁目サン番地」のほうがきれいに韻を踏んでるし)
コメント (2)
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