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アトリス解散

2015-05-07 22:50:50 | 秋田のいろいろ
鉄道会社では、様々な業種の子会社を持っていることが多い。
JR東日本(東日本旅客鉄道)もそうで、国鉄時代のキヨスクや日本食堂の流れを汲む「JR東日本リテールネット」や「日本レストランエンタプライズ(NRE)」、日立グループだった「東京モノレール」、ダイエー系列だった出版社「オレンジページ」、さらには東急系列の車両メーカー東急車輛も「総合車両製作所(という社名)」として傘下に入れてしまった。

JR東日本は、首都圏と秋田のような地方と、状況が大きく異なる両方を営業範囲とするのも特徴。
そのせいか、支社におおむね対応するエリアごとに営業する地域別の子会社も存在する。各地でホテルや駅ビルを営業したり、小規模な駅の駅業務を受託するといった業務内容。ここ数年は、その再編が激しい。

例えば、秋田駅ビルを運営していた「秋田ステーションデパート株式会社」と、秋田駅隣のホテルメトロポリタン秋田の「秋田ターミナルビル株式会社」が2004年に合併、現在は「秋田ステーションビル株式会社」になっている。
弘前駅ビル「アプリーズ」などを運営していた「弘前ステーションビル株式会社」は、新幹線新青森開業を機に、盛岡支社と秋田支社両方のエリアにまたがる「株式会社JR東日本青森商業開発」に再編され、消滅(2011年3月)している。


そして間もなく、長らく変わらずに続いてきた秋田の子会社が、ついになくなることになった。
JR東日本本社の4月30日付プレスリリース「JR東日本グループ事業の再編について」において「グループ一体となったサービス品質や運営力の向上を目的として、事業再編を行うこととしました。」としている。
7月1日付で高崎、水戸、千葉、盛岡、秋田(の各支社エリア内)で、子会社間の業務移管や吸収合併を行い、岩手と秋田では子会社が1社ずつ消滅するため。

なくなる2社は、岩手の「株式会社ジャスター」と秋田の「株式会社ジェイアールアトリス」。
両社が現在行っている事業は、秋田ステーションビルと盛岡ターミナルビル、JR東日本東北総合サービスの既存3社に分割して継承される。
「JR東日本東北総合サービス」はこれまで宮城、福島、山形で同じような事業をやっていた企業。秋田支店と盛岡支店が置かれるようで、営業エリアが北に拡大することになる。


ここからは、秋田のジェイアールアトリス(以下、アトリス)を中心に。
リリースによればアトリスから秋田ステーションビルに移管されるのは、「賃貸業(フィットネスクラブ)」だけ。秋田駅東側に2010年末に最近できた「ホリデイスポーツクラブ秋田」の大家の業務を指すと思われる。(フィットネスクラブを直接やっているのではなく、貸しているだけ)

他の事業はすべて東北総合サービスへ移管。
リリースには「駐車場 自販機」「構内店舗 等」「受託事業(駅等)」の3つがあるが、アトリスそのものがなくなるのだから、それ以外も含めて、今、アトリスがやっていること全部だろう。
駐車場というのは、秋田市内の駅近くの線路沿いなど「こんな所に!」という所にアトリス管理の月ぎめ駐車場があったりする。構内店舗は秋田駅中央改札向かいのNEWDAYS(改札横のは別会社)とか、2年前にNREから移管された土崎駅のそば屋(1年前の記事)とか。
受託事業(駅等)は小規模駅の改札や窓口で、一見するとJR本体の社員のようだが制服が違う。配置されているのはJR本体を定年退職後再雇用されたOBが多いのだろう。羽後牛島、新屋、十文字、二ツ井、船越、岩館の各駅、秋田駅と大曲駅の新幹線乗換改札口のほか、弘前ステーションビルから移管された川部、津軽新城、鰺ケ沢、板柳の各駅。(同様の形態の秋田駅のトピコ口、メトロポリタン口はステーションビルに委託しているそうだ)


アトリスの本社は、秋田市中通七丁目の秋田駅南側のJR東日本秋田支社の建物群の中の1つ。
ジェイアールアトリス本社
以前は、業務内容を列挙した看板が歩道に面した壁面に出ていた。「アトリス」は「Akita Total Life Service」の略だそうで、それだけに手広くやっているなと見た覚えがあるが、今は撤去されている。その中には、シロアリ駆除なども入っていた記憶があるけれど、今はやめたのだろうか。
別に、羽後牛島駅の卸町側の昔駅舎だった建物に「秋田用地管理事務所」、青森の藤崎駅(と浪岡にも?)にも拠点がある。
本社玄関の看板

ほかに業務内容は、我々には直接関係ないけれど社員の研修など。
あとは、スーパーマーケット事業。
以前記事にした通り、秋田市で「秋田生鮮市場」という食品スーパーを経営している。かつては土崎店もあったがアトリスの経営でなくなり(JR外へ譲渡され「生鮮いちばん」に改称)、現在は保戸野店だけ。

JR東日本本社ホームページ「支社別グループ会社の取り組み(http://www.jreast.co.jp/life_service/group/)」として、秋田生鮮市場保戸野店が紹介されている。
JR東日本のホームページに「保戸野」の文字があるのが意外
秋田生鮮市場もそのまま東北総合サービスが引き継ぐということだろうか。
(再掲)アトリスの名はなく「JR東日本グループ」だからこのまま使える
ひょっとしたら、土崎のように他者の手に渡って「生鮮いちばん」になってしまうかもしれない。あるいは、東北総合サービスでは「生鮮食品ピボット」というスーパーを5店舗経営しているので、そっちに鞍替えということもなくはないのかもしれない。
再掲)かつてのレジ袋
上のレジ袋の写真の下の「A」をモチーフにしたのがアトリスのロゴ。本社の建物にはなかったけど、社員(駅員や店員)の名札には表示されているはず。


今回のリリースによれば、ジェイアールアトリスは1996年4月1日設立、資本金310百万円、2014年度売上1488百万円。(ちなみに生鮮市場は2000年頃オープン)
ちなみに岩手のジャスターはそれぞれ1992年4月1日、400万円、5994百万円。

アトリスの現在の社長は嶋貫さんという方。5年ほど前に秋田駅の駅長をされていた。
【2017年4月4日追記】2017年4月の秋田駅リニューアル時に出ていた花に、嶋貫さんのお名前があった。「JR東日本東北総合サービス 常務取締役 秋田支店長」という肩書き。そのまま残っているようだ。
なお、アトリスでは「http://www.jratlis.jp/index.html」というサイトを保有していたが、ホームページの中身は存在しない。


アトリスの名は秋田でも著名ではなかったが、知らず知らずに世話になっていた人は少なくないはず。創業20年目前で幕を下ろしてしまうのは、少々寂しい。
それがなくなっても、事業自体は変わらず続くから、利用者への影響はないのかもしれないけれど、JR東日本という大きな企業の中で、秋田に根付いた企業が消えるのは惜しいし、東北地方をひとくくりにして地方を軽く扱いたい本社の意向が見え隠れするようで、ますます東京一極集中が進んでしまいそうな気がしてしまう。極力合理化したいのも分かるけれど。

岩手のジャスターのほうは、たしかテレビコマーシャルを流していたし、昔は自社で鮭などの燻製を作って売っていたので、地元での知名度はアトリスより高かっただろう。
燻製は「釜石スモーク工房」で、1988年に発足(当初はJR東日本直営)。東日本大震災の影響か2011年で営業が終わっていた。
岩手日報では5月1日に「ホテルと駐車場事業一部移管へ JR東、ジャスター解散」として記事にしている。「従業員416人(アルバイト、パート除く)は事業移管先に転籍、出向替えなどとなり、雇用は維持される。」そうで、アトリスについては名前は出ていないが「秋田県内でジャスターと同様の事業を行う会社も吸収合併」としてちょっと触れてくれている。
一方、秋田ではニュースにはなっていないはず。

【6月3日追記】5月25日と6月1日付で、JR東日本秋田支社の小規模な異動があった。
その中で、角館駅長と横手駅助役がアトリスへ出向。アトリスから本体へ来る人はいないようだ。
出向する2名は、最後の1か月だけアトリス所属となるが、清算や残務整理要員ということか。

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コメント (2)
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