タイトルに惹かれて
映画館に足を運んだ。
『関心領域』。
マーティン・エイミスの小説
『The Zone of Interest』を原作に
ジョナサン・グレイザーが
脚本・監督を務めた同名の米映画で、
そのほぼ直訳が邦題。
アウシュヴィッツ強制収容所の
隣で暮らす収容所所長ヘスと
その家族らの日常を描き、
2023年、カンヌ国際映画祭で
グランプリとFIPRESCI賞を獲得。
その年のアカデミー賞には作品賞等
5部門にノミネートされ、
音響賞と国際長編映画賞を受賞した。
日本では本年5月封切。
それが早くも「名画座」に掛かった。
タイトルに惹かれたので、
監督やら受賞やらはアトヅケだ。
兎に角、題名が宜しい
で。
名画座だから2本観られる。
もうひとつは、かの名匠
ヴィム・ヴェンダースがメガホンの
『アンゼルム 〜“傷ついた世界”の芸術家』。
戦後ドイツを代表する芸術家
アンゼルム・キーファーの生涯と
その現在を追ったドキュメンタリー。
ヴェンダースといえば『パリ、テキサス』
『ベルリン・天使の詩』だけれど、
これまたアトヅケになるが、
『セバスチャン・サルガド/
地球へのラブレター』などの
ドキュメンタリーも手掛けている、
らしい
そして、この2本の並びが良かった。
シリーズものが続けて観られたり、
監督や俳優の初期と現在を比較したり、
テーマが同じ作品を並べたり、
名画座の企画の見せどころだけれど。
『関心〜』『アンゼルム』は
ナチスを掠めてはいるけれど、
そこには距離があって。
その距離感が実に良かった。
収容所の悲惨な画を一切出さず、
その恐怖「など」を炙り出す映画が
前者。後者は、数多の批評の中に
ナチスや戦争も含まれている。
どちらも楽しさはゼロ。
不安定に過ぎる世界の中で
自分自身崖っぷちに立っていながら
見て見ぬふりをしている日常で
たまには考えるのも……善し。
追記
恐怖ではなく「など」に括弧したこと
『関心領域』。
長い説明をハショったらそうなった。