本棚や押入れに詰まったままになっている本類の整理処分に取り掛かって久しいのですが 正直 なかなか捗っていません。
引っ張り出しては見るものの 1冊、1冊、過去に1度も読んだことが無い本だったり、読んだことがあってもすっかり忘れてしまっている本だったり、懐かしくなって もう1度読んでみたくなる本だったりして 手が止まってしまうからです。
そんな中、先日 心理学者 多湖輝著 日本人が育んだ”生きる知恵” 「曖昧力」 (学習研究社)が 出てきました。
2008年2月初版となっていますので 比較的新しい本です。記憶曖昧ですが 7~8年前 当時の新聞の広告かなにかで知り 珍しいことに 自分で書店に出向き 買い求めた本のような気がします。買った位ですから 1度は読んだはずですが 記憶力減退の爺さん、ページを捲ってみると 初めて読むような感覚になってしまい また読み始めてしまいました。
「プロローグ」・・曖昧力は 世界に誇れる”日本人力”
冒頭、先ず ジャーナリストの柳下要司郎の著書から引用した話で 興味がそそわれます。
海外在住のビジネスマン夫婦三組が 船上で海賊に襲われ 「有り金を出すか 妻を差し出せ」と脅かされた時 アメリカ人は 「有り金は 全部渡すから 妻も連れていってくれ」と言った。中国人華僑は 「有り金全部より妻の方が高い。妻を渡したらいくらくれる?」と言った。さて 日本人は 何と言ったか?。
日本人は 「本国に聞いてみる」と答えたという 例え話です。
日本人の主体性の無さ、付和雷同性、優柔不断、人の目を気にする他人志向性、等を皮肉る 日本人の本質を突いたジョークとして取り上げた話ではありますが この話を柳下要司郎氏に紹介した 元「フォーブス」アジア太平洋支局長ベンジャミン・フルフォード氏は 一見 主体性の無く、優柔不断に見える日本人の本質は 実は 世界に類を見ない 包容力と柔軟性の賜物であり 行き詰った難問を自然に解きほぐしていく したたかな問題解決力を持った資質であると 評価していたものだという話です。
多湖輝氏は その日本人の本質 曰く言いがたい力のことを 「曖昧力」と呼び その「曖昧力」について この書で語っています。
一見 「曖昧」に 見えて 「曖昧力」が 有る 両面性について 著者独特のインパクト有るフレーズが 並んでいます。
「ぼんやり」 に 見えて 「以心伝心」「あうんの呼吸」
「適当なあんばい」 に 見えて 「本能的な勘」「第六感」「直観力」
「いい加減」 に 見えて 「融通無碍」
「あやふや」 に 見えて 「柔軟なしたたかさ」
「優柔不断」 に 見えて 「悠々の自然体」
「宙ぶらりん」 に 見えて 「よりよい結論を導く段取り」
「成り行き任せ」 に 見えて 「高度な戦略性」
「中途半端」 に 見えて 「慎重な様子見」
「不徹底」 に 見えて 「逃げ道の温存」
「当てずっぽう」 に 見えて 「神業的暗黙知(職人芸)」
「玉虫色」 に 見えて 「絶妙な適応力」
「行き当たりばったり」 に 見えて 「臨機応変」
「とりあえず」 に 見えて 「行き詰まりの突破口」
「八方美人」 に 見えて 「絶妙なバランス感覚」
西欧的な 二元論、二者択一、白か黒かはっきりしなければ気がすまない論理、曖昧を良しとしない発想、自分の信ずるもの以外を断固拒否、排除する原理主義は 果てしない紛争を巻き起こす原因になりますが そこに 「曖昧力」が有れば 切り抜けられることが多いのではないかと 氏は述べています。
日本も 次第に欧米の考え方が中心となって 日本人の生きる知恵だった「曖昧力」は 働かなくなり 失われてきていますが 意識して取り戻せば 柔軟でしなやかな強さを持った生き方が出来るのではないか等と 著者は プロローグを締めくくっています。