図書館に、昨年の春、予約していた、藤野千夜著 「じい散歩」(双葉文庫)が、ようやく順番が回ってきて、先日借り、読み終えた。
数年前まで、読書の習慣等、まるで無かった爺さん、著者の著作を読むのも、もちろん初めてのこと、ブログ・カテゴリー「散歩・ウオーキング」に、「君の名は?花に訊ねつ爺散歩」「君の名は?鳥に訊ねつ爺散歩」等書き込んでいることもあって、新聞の書籍広告欄の「じい散歩」に、ビビッと来て、読んでみたくなったものだった。

裏表紙の内容紹介転載
夫婦合わせて、もうすぐ180歳、中年となった3人の息子達は、全員独身。
明石家の主である新平は、散歩が趣味の健啖家で、女性とのコミュニケーションが大好き、
妻は、そんな夫の浮気をしつっこく疑っている。
長男は高校中退後、ずっと引きこもり。
次男は恋人が男性の自称、長女。
三男はグラビアアイドル撮影会を主催しては赤字で、親に無心ばかり。
皆いろいろあるけど、「家族」の日々は続いてゆく。
そんな一家の日常をユーモラスに、温かな眼差しで綴った物語。
■目次
第一話 秘密の部屋
第二話 秘密の女
第三話 秘密の訪問
第四話 秘密の調査
第五話 秘密の話
第六話 秘密の思い出(一)
第七話 秘密の思い出(二)
第八話 秘密の思い出(三)
第九話 秘密の交際
第十話 秘密の旅路
エピローグ 秘密の通信
解説 木内昇
■主な登場人物
明石新平・英子・孝史・建二・雄三、
高木、
ひい姉さん、すみれ姉さん・さなえ(高木さなえ)、
さとえ、定吉、しげる、はるえ、
冨子、清美、
主人公の明石新平とその家族、妻英子、長男孝史、次男建二、三男雄三、かなり極端なキャラクターで描かれているが、我が身、我が家、あるいは、親戚や知人友人の家族に照らしてみると、部分的には、結構、似たり寄ったりのところもあるような気がして、笑いが込み上げてきたり、微笑ましく感じられたり、納得したりもしてしまう物語である。
そして、「エピローグ」では、まるで、テレビドラマの最後の場面の挨拶のごとくで終わらせており、なんとなく、続編が有りそうな含みも見える。
そして、新平は、くるりとこちらを向いた。
「この本をお読みのみなさん、こんな家族は、嫌だとお思いでしょう?、
でも、この家族は、実在します。
都内のある昭和の建売住宅で、今日も老いた私が、老いた妻の世話を焼いています。
いざとなったら、息子たちがちゃんとするだろうなんて、そんな甘い期待は、
もう、かけらもありません。
いずれ、私に介護が必要になったら、さっさと全財産を処分して、
施設に入ろうと決めています。
もし、それで息子たちが困るなら、困ればいい。
でも、今はまだ、この家で妻の面倒をみなくちゃいけません。
そこまでが、私の人生の仕事、と覚悟しています。
私、明石新平は、九十四、妻英子は、九十三になりました・・・・」
藤野千夜(ふじのちや)
プロフィール
1962年、福岡県生まれ。千葉大学教育学部卒。
1995年、「午後の時間割」で、第14回海燕新人文学賞、
1998年、「おしゃべり怪談」で、第20回野間文芸新人賞、
2000年、「夏の約束」で、第122回芥川賞を受賞。
その他、著書に、「ルート225」「中等部超能力戦争」
「D菩薩峠漫研夏合宿」「編集ども集まれ!」「じい散歩」
「団地のふたり」等がある。