図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「春雷」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」の第7弾の作品。
「第一話 風呂屋船」「第二話 蕗味噌(ふきみそ)」「第三話 畦火(あぜび)」「第四話 花の雨」の連作短編4篇が、収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。
「第一話 風呂屋船」
▢主な登場人物
秀吉(ひできち)・お初、文吉、
城市(検校?、深川材木商三国屋次男坊勘当)、鮫蔵、おきん、
野江、
野田の旦那(南町奉行所定町回り同心)
▢あらすじ等
船風呂屋秀吉に裏切られたお初は、生まれたばかりの赤子文吉を捨て、死を選ぼうとするが
死に切れず、慶光寺に駆け込む。秀吉は、鮫蔵殺しの疑いで南町奉行所同心野田に捕縛される。
十四郎、藤七が、探索開始、次第に明るみになってくる事実、検校?城市の企みが?
「秀吉さんを、鮫蔵と思ってさ」、
おきんは、風呂屋船を顎でさした。
「婆さんが・・・・、そうか、文吉の子守をするのか」
「いえいえ、むかしとった杵柄ですよ旦那。小町と呼ばれていた頃、あたしゃ、
踊りの名人だって言われていたんですから」「何、婆さんが踊る?・・・・、
踊って客寄せを刷るというのか」・・・・、十四郎は吹き出した。
「第二話 蕗味噌」
▢主な登場人物
山崎与五郎(旗本200石)・喜野、未緒、
力弥、お染(あやめ)、黒木忠兵衛、
おたき・仙太郎、
赤井源内(浪人、渡り用人)
▢あらすじ等
中間力弥との不義を疑われ、夫与五郎に殺されると慶光寺に駆けこんできた旗本の妻女喜野
だったが、その裏には、したたかな悪女おたきの企てが・・・。力弥、お染の哀れ、
源内が声を落として言う。
「はい。女子(おなご)は恐ろしい生き物だということです。・・・・・、
これは山崎様に限ったことではございませんが、若い頃に苦労ばかりかけたようなお人は、
たいがい、老後は悲惨です・・・・」
「第三話 畦火」
▢主な登場人物
為三(雷電為左衛門・天狗舞)・おかよ、利助・お袖、
遠州屋、おつた、
松蔵(利助の幼馴染)、
▢あらすじ等
橘屋の主人お登勢を付け狙う初老の大男とは何者?、その理由は?、縁切り事件の逆恨み?、
十四郎、藤七、金五、等が探索、そこに隠されていた真相は?、
遠州屋の悪業が元凶だったとは・・・。
配下を従えて与力松波孫一郎が馬で駆け付けて来た。
「遠州屋、お前を召し捕る」、
捕り方の後ろから利助が走り出してきて、為三にすがりついた。
「再縁する?・・・・、お袖、本気なのか」と十四郎。
「畦火・・、つまり為三は、灰になって新しい芽を育てる肥料になる覚悟だというのか」
金五が目を白黒させた。
「第四話 花の雨」
▢主な登場人物
辻国之助、遠山壱之丞、お栄、弁天屋喜左衛門、
西尾数馬・松江・小太郎、
楽翁、万寿院、春月尼、
▢あらすじ等
お登勢の茶の湯の仲間の一人、辻国之助が、菊池藩上屋敷御賄方西尾数馬の妻女松江と不義の
疑いをかけられ、遁走、5歳の小太郎を置き去り、その後を追った松江、女敵討ち?、
苦悩する西尾数馬、
目撃者お栄の証言、楽翁へ嘆願、お登勢、十四郎等が懸命に手を打つが・・・、
果たして、その結末は?
「お登勢様、十四郎様、ご恩は一生・・・」、
松江は手をついた。十四郎は、松江のはかなげな襟足を見て、はっとした。