図書館から借りていた、葉室麟著 「冬姫」(集英社文庫)を、読み終えた。本書は、乱世を生き抜き、自らの運命を切り開いた、織田信長の二女、冬姫の生涯を描いた長編時代小説だった。
▢目次
「橋姫の夜」「夜叉の笛」「まだら蜘蛛」「天女舞」「どくろ杯」
「紅蓮の城」「女人棋譜」「魔鏡の影」「独眼竜の恋」「花嵐」
解説 村木嵐
▢主な登場人物
冬姫(織田信長の二女、蒲生忠三郎(氏郷)の妻)、いお(乳母)、
蒲生氏郷(がもううじさと、幼名鶴千代、蒲生忠三郎賦秀(やすひで))、
蒲生賢秀(がもうかたひで)、蒲生秀隆(幼名鶴千代、蒲生氏郷と冬姫の嫡男)、
鯰江又蔵、もず、
織田信長、帰蝶(織田信長の正室)、鍋の方(織田信長の側室、興雲院)、
五徳(徳姫、織田信長の長女、徳川信康の妻)、築山殿、
お市(織田信長の妹、浅井長政の妻、柴田勝家の妻)茶々(淀の方)、初、江、
明智十兵衛光秀、玉子(明智光秀の娘、細川忠興の妻、ガラシャ)、いと、
羽柴秀吉、徳川家康、前田利家、伊達政宗、柴田勝家、高山右近、石田三成、細川忠興
北政所(おね)、まつ(前田利家の妻)、
▢あらすじ等
織田信長の二女として生まれ、「武家の女は槍や刀ではなく、心の刃を研いでいくさをせねばならぬ」と言い聞かせられて育ち、長じて蒲生氏郷(蒲生忠三郎)の妻となった冬姫が、父親織田信長への敬慕の念と、名将と知られようになる夫蒲生氏郷へのひたむきな愛情を胸にして、多くの人間と巡り会い、渡り合い、乱世を生き抜き、自らの運命を切り開く、「女のいくさ」を描いている。
蒲生家の行く末を見届けた冬姫は、寛永十八年、この世を去った。
織田信長の娘として戦国の世を彩って生きた、紅い流星のような生涯だった。
著者独特の時代考証、歴史解釈による、戦国時代の一女性にスポットを当てた作品と言えると思うが、歴史にも疎い人間、正直なところ、これまで、冬姫という存在すらも知らずで、「へー!、なるほど・・、そうだったのか・・・・」、
目から鱗、・・・・、である。
さらには、蒲生氏郷、羽柴秀吉、伊達政宗、徳川家康、等に対する人物観までもが、微妙に変わってくるから不思議なことだと思う。
淑き人の良しとよく見て好しと言ひし吉野よく見よ良き人よく見(天武天皇の和歌)
限りあれば吹かねど花は散るものを心みじかき春の山嵐 (蒲生氏郷、享年40歳、辞世の歌)