図書館から借りていた 畠山健二著 「本所おけら長屋」(八) (PHP文芸文庫)を 読み終えた。
「本所おけら長屋シリーズ」第8弾の作品である。
本書には 「すけっと」「うらしま」「ふところ」「さしこみ」「こしまき」の連作短編5篇が収録されている。
ほぼ1話完結構成なので 記憶力減退爺さんには 読み易い。まるで 江戸落語さながらの笑い有り、涙有り、テンポの良さも有り 一気に読み通せる作品であると思う。
畠山健二著 「本所おけら長屋」(八)
物語の舞台の中心は 江戸本所亀沢町にあるおけら長屋。
おけら長屋には 貧しいくせに、お節介、人情に厚い住人達が まるでひとつ家族のように 関わり合いながら、助け合いながら、肩を寄せ合って暮らしている。
次々巻き起こる騒動や事件、厄介事に対しても 笑いと涙で体当たりし まーるく収めていく。人の優しさが心に沁み込んでくる時代小説である。
毎巻 巻頭には 物語に登場する場所等を示した 本所、深川周辺の江戸地図と おけら長屋の見取り図、住人名が掲載されており、物語の途中、随時、確認出来るので助かる。
その壱 すけっと
仇討ちをしようとする森田小次郎は病持ち、される方の石川孫蔵は 新しい所帯を持って妻の腹に子供がいる、さて 万造、松吉、島田鉄斎、どうする?、どうする?
南町奉行所同心伊勢平五郎、桑原肥前守樽紀の粋なはからいも有って 1件落着。
その弐 うらしま
松井町に有る三祐は 万造、松吉、八五郎、島田鉄斎等 おけら長屋の住人御用達の安い居酒屋。その居酒屋に見慣れぬ男が座っており・・・、湯屋の下働き、亀次郎と分かるが 実は その男には 秘密が有り・・、
その三 ふところ
勝てない力士 大男の大巌、万造、松吉、島田鉄斎等、おけら長屋応援団が 回向院の勧進相撲勝ち抜き戦でどうしたら勝てるか 頭をしぼる・・、果たして。
その四 さしこみ
黒石藩江戸藩邸藩士田村真之助(16歳)は 小柄、心配性、胃弱、いつも泣きそうな顔をしている男。おけら長屋の連中に いいように翻弄される物語、笑いがこみあげて仕方ない。
その五 こしまき
おけら長屋の住人ではなく 北橋長屋の住人、浪人郷田豪右衛門に纏わる物語であるが、
寄せ来る大波の如く笑わせた後、ラストでは 「フランダースの犬」並みの感動シーンが有り、泣かせられる。
いつも悪態を吐き合っている聖庵堂の女医師お満とおけら長屋の万造の行く末は?
本文、最後の文節
「お満は万造に、ほのかな絆を感じている。万造は自分のことをどう思っているのだろうか。お満と万造は、豪右衛門、富士、それぞれの墓に花と線香を立てた。その線香の煙は寄り添うように空へと上がっていった。」