図書館から借りていた 平岩弓枝著 御宿かわせみ9 「一両二分の女」 (文春文庫)を 読み終えた。「御宿かわせみシリーズ」第9弾の作品である。
本書には 表題の「一両二分の女」をはじめ 「むかし昔の」「黄菊白菊」「猫屋敷の怪」「藍染川」「美人の女中」「白藤検校の娘」「川越から来た女」の 連作短編8篇が収録されている。
平岩弓枝著 御宿かわせみ9 「一両二分の女」
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これまでの「御宿かわせみシリーズ」の主要登場人物
神林東吾・・・南町奉行所吟味与力神林通之進の弟。伸びやかな性格の美男子。「かわせみ」の女主人るいとは幼馴染。諸般の事情で正式な結婚が出来ないものの、夫婦同然の関係になっている。親友の定廻り同心畝源三郎の手伝いをし、次々発生する事件に首をつっこみ捕物に加わる。
るい・・・大川端の小さな旅籠「かわせみ」の女主人。幼馴染の神林東吾とは 相思相愛、夫婦同然の関係になっている。鬼同心と言われた父親庄司源右衛門の一人娘で 父親死後 婿を迎えて家を継ぐべきところ 同心株を返上し、旅籠を開業。美人で 情け深く、世話好き、小太刀も振う勇敢さも有り 女長兵衛を気取る。
畝源三郎・・・八丁堀り定廻り同心。神林東吾、庄司るいとは 幼馴染。野暮ったいと言われるが 誠実、迅速、着実な男。
嘉助・・・「かわせみ」の老番頭。元々、同心だったるいの父親庄司源右衛門の若党だった。事件が起きる度、捕り方の習性、感が目覚める。るいを お嬢さんと呼び 守り、助ける忠義者。
お吉・・・「かわせみ」の女中頭。元々 同心だった庄司家の奉公人だった。るいのことを お嬢さんと呼び、立ち振る舞いに落ち度が無い、しっかりした忠義者。好奇心旺盛。おしゃべり。随所のお吉の口出しは この物語に無くてはならない要素になっている。
神林通之進・・・神林東吾の兄。南町奉行所吟味与力。東吾とはひと廻り以上年上で 東吾の父親代わりでもある。優しい風貌の美男子。妻の香苗とは おしどり夫婦。
香苗・・・神林通之進の妻。麻生源右衛門の長女。通之進とは幼馴染で 子供の頃からの許嫁で相思相愛。おっとりした性格。人目を忍ぶ東吾とるいの関係を温かい目で見守る。
七重・・・麻生源右衛門の次女(香苗の妹)。神林東吾のことが好きで 婿に迎えて 麻生家を継ぐ話も有ったが るいの存在が有り 物語の後半では 半ば身を引き 東吾の親友と結婚することになるようだ。
長助・・・畝源三郎のお手先(岡っ引き)。本業は 深川佐賀町のそば屋長寿庵の主人。岡っ引きには珍しく人柄が良く、誠実、温厚で 東吾や「かわせみ」の人たちと親交が深い。
松浦方斎・・・狸穴の道場方月館の主。直心陰流の達人。温厚な人柄。刀剣等に造詣が深い。道場は 師範代になっている東吾に 任せきっている。
善助・・・道場方月館の老番格。
おとせ・・・方月館の家事一切を引き受けている女性。ある事件で東吾が知り合い 息子正吉と共に方月館に身を寄せており、東吾に信愛の情を持っている。
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「むかし昔の」
旅籠「かわせみ」に飛び込んできた一人の老人、「おかしい」・・・八丁堀り時代の捕り方の目で、瞬間嘉助は感じた。妻も子も愛人すらもあの世に旅立ってしまい人生の週末を迎えた男の孤独?思い出したのは むかし昔通った妾宅と女の面影?、「かわせみ」に滞在している老人は 半田屋和兵衛なのか?
「黄菊白菊」
日本橋 奈良屋徳兵衛のいざこざから 舞台は 菊作りが盛んな白金村へ。
孫娘おかよのために 菊作りの老人久作は 鍬を振り上げた・・・。
「猫屋敷の怪」
日本橋の大店山形屋の出来の悪い娘おすがの失踪と死因は?、東吾、嘉助、源三郎、長助の探索、推理、捕り物、
「藍染川」
家付き娘に婿入りした井筒屋徳兵衛門が 妻女死去後、昔捨てた我が子を探し始めたが その果ては・・・。清太郎?、新之助?・・・「あいつには あいつの生き方があるんだろうよ」
「美人の女中」
人手不足で口入れ屋からやってきた女中おたきは 「かわせみ」に波紋をもたらし、80両紛失事件が起こった。おたきが怪しい?、源三郎や長助の捜査でも犯人不明。おたきが東吾に 「あのおかみさんのお腹を調べて下さい」と ささやく。
「白藤検校の娘」
盲人で 琵琶琴弦、或いは 鍼療治、按摩等を業とする者には 検校、勾当、座頭の階級があったが 徳の都は 本所石原町の家の庭に白藤が有ることから 白藤検校と呼ばれ 金貸し業をしていた。健気な娘おきみは 金貸し業をやめようとする。おきみが東吾を訪ねて「かわせみ」にやってきて るいのやきもちの種になる。
「川越から来た女」
大川で夜釣りをしていた東吾と長助が 流れに漂っていた女お三重を助けるところから物語が始まる。殺されそうになったお三重、殺された松五郎、その真相を探り 謎解きが開始されるが 解明出来ず、東吾は 以前登場している将軍家御典医天野宗伯の息子、天野宗太郎に医者の心について相談したことがヒントになり 事件の結末を迎える。
「一両二分の女」
表題の作品。塗物の産地能登から毎年商用で江戸に出てきている問屋の一人輪島屋久兵衛が「かわせみ」に宿泊、同業の一人折戸屋吉之助が行方不明になったところから物語が始まる。
女療治師お辰?、安囲い?、お蓮?、殺し?
源三郎、東吾、長助、の謎解き、捕り物の末は・・・、
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ほぼ 1話完結、連作短編構成なので 読み易い。読み始めれば 一気に読める作品だが 「御宿かわせみシリーズ」は 第38弾まで有るようで 全作品を読み終えるには 相当な月日が掛かりそうだ。