講談社文庫 2004
表題作「袋小路の男」はエリック・サティの音楽の似合う
静謐に満ちたいい作品だった。プラトニック・ラブという
ものであり、男と女の静かな精神の交わりみたいなものが
感じられて、さすが川端康成賞を受賞しただけあるなあ、と
思った。
でも、「小田切孝の言い分」はよくなかった。平凡に堕して
いた。ストーリーも平凡で、文体もフツーにおもしろくなく、
ツンドクした。
なんか読みとうなかったので、本を投げだしてしまっていた
が、好きでもなくなってしまう人の子を妊娠とか、すごく
不潔な感じである。そういう詰まらぬごたごたから逃げるた
めに読書はあるのではないだろうか、などと思ったものの、
ふとまた、この本を手にして、「アーリオ、オーリオ」という
短篇をじっくりと読んでみた。思春期の女の子のもろく切ない
感じと宇宙の話しが相まって、不思議と心に響いてくる。
おじさんも乙女なのだよ、と心にじわじわと来た。大人の読
み物だな、と思って、外の雨音に耳を澄ませた。……合掌。
一服するときに、まめっこぷりんはいいよね。世界が終わるときに、山を登るときに、まめっこ。海を渡るときに、空を飛ぶときに、まめっこ。いつでも、まめっこといっしょ。
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