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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「札幌学」 岩中祥史

2009年03月14日 | 本(解説)
札幌学 (新潮文庫)
岩中 祥史
新潮社

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この著者は、「出身県でわかる人の性格」などという本を書いていますね。
知られざる札幌と札幌人の正体とは!
さて、札幌の地元に住んでいる身として、この本はどうなのか。
多分に興味を持って読んでみました。

まずは札幌人の分析ですが…、
まあ、札幌人というよりは北海道人といってもいいですね。
北海道は大変歴史が浅く、住んでいる人も日本各地から集まった人々です。
それぞれの、風俗・習慣、言語・文化、信仰など、
多種多様であったはずですが、
これにこだわっていると事が成り立たなくなってしまう。
ひとたび、それぞれに当たり前と思ってきたことを、捨て去る必要があった、と。
それで、「北海道流」、「札幌流」のやり方が生まれたといいます。

それはどういうことかというと、つまり人のしがらみに縛られない。
どこかのんびりしていて、
他人を押しのけてでも何かをしようという気持ちに欠ける、
と著者は言っておりますね。
自由、開放的、大陸的。
…といえば聞こえはいいですが、大雑把、無頓着ともいえます。

しかしまあ、私など生まれたときからこちらに住んでいるので、
これで当たり前と思っておりまして、
この本で指摘されて始めて、「ああ、そうなのか・・・」と認識するしだいです。

私は、冬になるとつくづく思うことがあるのです。
それは、よくも、うちのご先祖は
(といってもせいぜい私の祖父母なんですが)
物好きにもこんな寒いところに移り住んできたもんだなあ・・・と。
多分、「北海道は土地がたくさんあって、自由だ」・・・とか何とか、
だまされて渡ってきたのでは・・・?
などと推測するのですが。
うちの祖父母の出身は岩手・山形なので、
まあ、もともと暖かいところではないですけどね。

そんな風に、目新しいものに興味を持ってすぐ飛びつく。
そんな人たちが集まった土地であるわけです。
・・・だから、札幌は何でも流行の最先端を行くそうですが、納得できますね。

著者があげた、札幌のここが変。
◆通夜は最初から最後までいるのがルール。
 途中退席はなし。
 香典を出すとすぐに香典返しの品が渡され、
 その後、包んだ金額の半返しで品物が送られるなんていうことはない。
◆おせち料理は、大晦日から食べる。
◆結婚式は会費制。大金をお祝いに包むなんてことはなし。
◆50キロ制限の道道を堂々80キロで疾駆。(これは実は観光客に多い)
◆人目をあまり気にしない・・・という気質から、離婚率が高い?
すみません・・・すべて本当です。

しかし、文中、それは嘘だよ~、という部分もありました。
それは、

この地の人たちには、「結婚」そのものに緊張感というか、
人生の一大事といった感覚がほとんどない。
・・・「今度結婚するから」
「娘さんと一緒になりたいので、よろしくお願いします」
といった電話一本で済ませてしまう。
・・・いわれた親のほうも、「あっ、そう」で終り。

いくら北海道でも、こんなことは普通ではありません!!
すすきのとか、よほど特殊な場で仕入れたネタなんじゃないでしょうか。
まともに生活している方々なら、
絶対にこんなことはないので、
くれぐれも、「楽そうだから北海道の女性と結婚しよう」
などと思いませんように。

それから、著者の指摘で、考えさせられたのは、
北海道の人は官への依存度が高いということ。
北海道の開拓自体、官主導で行われたわけで、
だから、自分たちは何もしなくてもお上がナントカしてくれる、
そういう意識が強いというのです。
これは私自身、あまり感じたことがなかったので、
これからはちょっと頭のスミに置いて、
いろいろなことを見聞きしてみたいと思いました。

この本には、もちろん札幌の良いところもたくさん紹介されているので、
興味のある方はぜひ読んでみてください。

札幌に赴任してくる人は2度泣く、といわれています。
一度目は赴任が決まったとき。
あんな辺鄙で寒い土地に…と、すっかり気分左遷。
泣く泣くやって来るわけです。
そして、二度目は、札幌から離れる時。
こんないいところを去るのはつらい、離れたくない・・・と。

北海道の他の地はともかく、
札幌は自然に恵まれていながら適度に都会なので、
実際すみやすいと思いますよ。
私も、冬はいやだといいつつも、
だからといって、老後は暖かいところに移住しようなどとは全く思いません。

札幌の自慢は6月。
若葉と花々に彩られ、梅雨のないさわやかな初夏。
まあ、ぜひ一度は来てみてくださいませ。

満足度★★★★☆