映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

マーリー/世界一おバカな犬が教えてくれたこと 

2009年03月31日 | 映画(ま行)
日々の生活の中にこそ、生きていく意味がある

* * * * * * * *

ジョンとジェニー夫妻は、子育ての予行練習として、犬を飼うことにしました。

離乳を済ませてやってきた子犬はマーリー。
・・・しかし、この犬のやんちゃなことといったら!
マーリーはラブラドール・レトリバー。
盲導犬を見るといかにもおとなしく従順で賢いのですが、とんでもない! 
きちんとしつけをしないとこうなっちゃう、という見本のような犬です。
でもまあ、普通の家で飼うのなら、そこまで厳密なしつけは要りませんよね。
ただ、同じく犬を飼う身としては、
いくらなんでも、家具やそこら辺のものを齧るくせくらいは
きちんとしつければ直るのに・・・と思わないでもないですが。


しかし、このストーリーはその犬の成長物語というわけではないのです。
そこにはこのグローガン夫妻の、日々の生活がある。
ジョンは、新聞のコラムニストなのですが、
本当はもっと最前線の記者になりたかった。
対極として、友人の記者がいます。
彼は独身で忙しく世界中を飛び回っている。
そんな彼をいつもうらやましく思うジョン。
ジョンにも、そのチャンスはあったのですが、
ちょうどその頃妻が妊娠し、
家を空けることが多くなるその仕事は断ることになる。
またジェニーの方も、優秀な記者だったのですが、
子育てに専念するため仕事を辞めるのです。
お互い、時には疲れてイライラし、後悔もするのですが、
しかし、日々子どもたちやマーリーに愛を注ぎ、注がれ
・・・そういうことに充足も覚えていく。

つい「レボリューショナリー・ロード」の夫婦を思い出してしまいます。
日々の生活に埋没することに恐怖すら覚え、
耐えられなくなってしまうのが彼ら。
しかし、こちらはそんな生活の中でも、
精一杯の自己実現を果たし、家族で支えあっていこうとする。
これはすごいことなのではなくて、
実はほとんどの人々が意識しないでやっていることなのかも・・・。
だからこの映画には誰もが共感できるのではないかと思います。
夫婦が親としての初心者から、少しずつ成長していく。
多くの人がいろいろな障害を乗り越えながら、体験していくことでもあります。

ジョンがいつも妻や子どもたち、そしてマーリーをも優しく見守る感じ、
いいなあ、と思います。
人によっては、このように家族優先の男なんてだらしない
・・・というかもしれません。
けれど、犬も子どもも守れない男なんて・・・、
いなくてもいいって思えてしまいます。

犬の一生は短いですね。
子どもたちはまだまだ幼いのに、
犬だけが先にどんどん老いて衰えていってしまう。
けれど、最期まで見届けるのも、飼い主としての責任です。
とにかくひたすらに無条件に、家族を愛してくれたマーリー。
泣かされます・・・。

さて、マイアミ育ちの子どもたちとマーリーが、
フィラデルフィアに引っ越したある日、
皆で窓の外を眺めて、歓声を上げる。
外にあったものは・・・?

ぜひ映画で確かめてくださいね。確かに、子どもと犬が大好きなものです。

しかしそれにしても、犬好きにはたまらない、いい映画です。
犬好きでない方も、きっと気に入るでしょう。
どこの家にもいそうな、しつけが完璧でないちょっぴりおばかな犬。
これがとてもリアルでたまらなく愛らしい。

原題 Marley & Me
このままのほうが簡潔明瞭でいいのに、と思います。
邦題は、ちょっといじりすぎ。

2008年/アメリカ/116分
監督:デヴィッド・フランケル
出演:オーエン・ウィルソン、ジェニファー・アニストン、エリック・デイン、アラン・アーキン

マーリー世界一おバカな犬が教えてくれたこと MARLEY and ME Trailer Japanese