映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ダウト/あるカトリック学校で

2009年03月27日 | 映画(た行)
過ぎた疑惑は、毒のように自分をも蝕む

            * * * * * * *

1964年、ニューヨーク。
カトリック学校セント・ニコラス・スクール。

ここの校長がシスター・アロイシス(メリル・ストリープ)。
非情に厳格な指導をする人で、多分、子どもたちは影でオニババとか呼んでいそう。
一方登場するのは、ストイックな因習を廃し、
進歩的で開かれた教会をめざす、フリン神父(フィリップ・シーモア・ホフマン)。
子どもたちや町の人々にも人気があるようです。
そして、もう1人は
新米のシスターで教師でもあるジェイムズ(エイミー・アダムス)。
この作品はほとんどがこの3人の会話からなっています。
もともとは舞台作品なんですね。
そして、出来事はといえば、
ある日クラスの黒人男子が神父に呼び出され、
戻ってきたときは、落ち込んでお酒の匂いがしていた。
そのことのみ。
このことにまずジェイムズが気づき、
かすかな疑惑を持ってアロイシス校長に告げるのです。

ところがその校長の中で疑惑はどんどん膨れ上がり、
その子と神父の“不適切な関係”を事実と思い込んでしまう。
結局真相はどこにあるのか、それは最後まで明かされません。
この疑惑を事実と思い込み神父をせめる校長と、
抗弁する神父の応酬が緊迫感にあふれています。
校長は多分に感情的で、
疑惑を突き詰めるためには
シスターでありながら嘘までついてしまう。
その姿はもう、高潔というよりは醜悪に近くなっているのですが・・・。


この作品のある解説には
「大量破壊兵器所持の疑惑をふりかざし、
暴挙に出て、泥沼にはまった
アメリカの過ちを彷彿とさせる・・・」
とありました。
なるほど・・・、
今、この作品の映画化の意味はそこにあるんですね。

これは疑惑に凝り固まりすぎると、やがてその疑惑は自分をも破壊していく
…という一つの寓話なのです。
真実がどうであれ、大事なのはその後の対処の仕方である、
とも言えるのではないでしょうか。
・・・いろいろ、考えることの多い作品です。

ワンシーンだけの登場でしたが、
黒人少年の母親役、ヴィオラ・デイヴィスも光っていました。
結局前者3人は観念が先走っているのです。
しかしこの母親は、息子を守るというまっすぐな意思だけがあり、
しっかり、地に足をつけた感じがする。
このエピソードがなければ
この作品はもっとつまらないものになっていたでしょう。

そして一つ気になったのが、ここに登場するもう1人の少年。
どうも何度か、
彼が物いいたげな視線を投げかけていたような気がするのですが・・・。
彼が真相のヒントを持っているような気がしてならない・・・。
そこが、この映画の秘密・・・?

2008年/アメリカ/105分
監督:ジョン・パトリック・シャンリイ
出演:メリル・ストリープ、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス、ヴィオラ・デイヴィス



『ダウト-あるカトリック学校で-』日本版予告編 DOUBT JTrailer