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「そろそろくる」 中島たい子

2009年03月15日 | 本(その他)
そろそろくる (集英社文庫)
中島 たい子
集英社

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「そろそろくる」中島たい子 集英社文庫

先に、「漢方小説」を読み、ファンになりまして、このたびも迷わず買いました。

そろそろくる。・・・一体何が?ということなんですが。

この本は“PMS”がテーマ。
PMSってご存知ですか?

PMSとは・・・、私も知りませんでしたが、
“月経前症候群”のこと。
女性が生理前にイライラしたり、落ち込んだり、
精神的な変調を来すことを言います。
もちろん個人差がありまして、
誰にでも明らかに現れるというものでもありません。


そもそも、プロゲステロンとエストロゲンという
ホルモンの相対量の変化からくる、
という、きちんとした医学的根拠のあるものなのです。


先の「漢方小説」でもそうでしたが、著者はたくみに、
この精神と肉体の表裏一体の関係を小説の主人公像に反映させています。

気持ちの不安定さが体調の不調を呼ぶのか。
それとも、体調の変化が精神の不安定さを呼ぶのか。
これはタマゴとニワトリ、どちらが先?の論にも似て、
どちらがどうとも言えない。
まさに表裏一体であり一蓮托生でもある
…ということなのだろうと思います。

しかし、この
『気持ちや体調の上下の振幅の大きい私も、私自身であるには違いなく、
そんな自分をきちんと見つめて、大切にしたい。』
そんな思いが伝わってきます。
そしてまた、そんな自分と付き合っている相手にも、
それは理解して欲しいし、
丸ごとの自分を受け入れて欲しい。そのようにいっていると思います。


本の中にありましたが、
女性が閉経までに迎える生理は、平均500回だそうで・・・。
主人公たちも、気が遠くなりそう・・・とぼやいていましたが、
全く、月々来るこのうっとうしいお客さんは、できればなくて欲しい。

以前にも書いたかもしれないのですが、
私は、長い歴史の中で、
女性がほとんど社会の前面に出てこられなかったのは、
この生理のためだと思うのです。
それが今、生理用品の目覚しい進歩と普及により、
どんどん女性が社会の前面に出られるようになった。

素晴らしいことなんですが、
でもそれは処置の点で便利になっただけで、
生理前のこのPMSや生理中の腹痛やらなにやら・・・、
そういうものが変わったわけではないですね。

一万年後の未来なら、
女たちの生理はもっと楽に進化しているのでしょうか・・・?

この本は、男性が買うのにはちょっと勇気がいりそうですが、
実は男性にこそ読んでもらいたい気がします。
そうすれば女たちの多少のヒステリーにも目をつぶってもらえそう・・・。

満足度★★★★☆