映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

黒く濁る村

2011年01月12日 | 映画(か行)
本当の勝者は誰か



            * * * * * * * *

韓国で人気を博したWEBコミックの映画化です。
韓国映画はあまり見ない私なのですが、予告編を見て興味がわきました。
何だか横溝正史の世界、八墓村のような・・・おどろおどろしい雰囲気が感じられたものですから。
そういうのが嫌いではないのです。


20年来音信不通であった父の訃報がヘグクに届きます。
彼はその父が暮らしていた山奥の村を訪ねる。
ところがこの村の人々は彼に対して警戒心をあらわにするのです。
この村の絶対権力を握っているのは村長のチョン・ヨンドク。
村長が彼の滞在を受け入れたため、村の人々の態度も一変する。

ヘグクは父の死因に不審を覚え、村の事情を探り始めます。
そんな彼の動きを阻止しようとする村長の手下たち。
しかし、関係者が一人、また一人と命を落としていく。
最後に現れる真相とは・・・
父の素顔、村長の正体、そして30年前のおぞましい事件。


この村長、チョン・ヨンドクは強烈にしたたかでアクが強い。
暴力や金がすべてを支配すると信じている。
つまりはコイツがすべての元凶なのですが、
このインパクトには嫌悪する一方、目をはなすことが出来ない。
これがこの作品の力になっているところです。

一方、ヘグクの父は宗教者であり、人々の心を導く高潔な人物であったはずなのですが・・・
政治と宗教が互いに利用し合い地下で通じている。
そうなったときは本当に怖いですよね。

そしてヘグクは・・・真摯に事件の謎を追う。
ヘグク役のパク・ヘイルのおかげかも知れませんが、
若干さめつつも爽やかな感じ(?)好感を持ちました。
そして、彼を助ける検事とのユーモアと皮肉にあふれる言葉のやりとりが、
この作品の重苦しさを救っています。


また、村の家々を結ぶ秘密の地下通路をたどるときのドキドキ感、
やはり、八墓村の鍾乳洞のシーンを思い出したりもして、
やっぱりこういう舞台はこの手のストーリーには不可欠なんですね。

ということで、この作品、おどろおどろしい雰囲気ばかりでなく
腐敗した構造をえぐるというような側面もあり、
なかなか見応えのあるものになっています。


ところが、ラストのほんのワンシーンで、
また私たちは足元が崩れる思いを味わわせられるのです。
本当の勝者は誰なのか。
すべてを俯瞰し操っていたのはある人の怨嗟だ。
実は大変に怖い物語であった・・・と最後に気づく、全く侮れない作品です。

2010年/韓国/161分
監督:カン・ウソク
原作:ユン・テホ
出演:パク・ヘイル、チョン・ジェヨン、ユソン