映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ヒーロー/靴をなくした天使

2011年01月22日 | 映画(は行)
人生は皮肉で複雑だ

ヒーロー 靴をなくした天使 [DVD]
ダスティン・ホスマン,ジーナ・デイビス,アンディ・ガルシア,ジョーン・キューザック
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


          * * * * * * * *

ダスティン・ホフマンが、さえないコソ泥男、バーニー・ラプラント役で登場します。
彼はある大雨の夜、飛行機の不時着現場に居合わせてしまいました。
とりあえず機は何とか着地したものの今にも爆発しそうだし、
中にはけが人もいるようだ。
人助けなどするつもりはなかったのですが、
自分の息子と同じくらいの少年が「お父さんがまだ中にいる」というものだから、
つい機内に入ってみる。
怪我で出られない人を何人か救い、
しかし、当の父親らしき人を見つけることは出来なかった。
少年に顔を合わせることが出来ず、こっそり立ち去るバーニー。
実はそのお父さんは既に自力で脱出していたのです。
バーニーはその時に、靴を片方なくしてしまいます。

さて、彼が救い出したうちの一人がTV局の敏腕女性レポーター、ゲイル・ゲイリー。
彼女は、多くの人を救いそっと立ち去った男の美談をTVにのせ、世間を感動させます。
そして、その謎の男を捜し出そうとする。
手がかりはシンデレラよろしく、現場に残された片方の靴。

一方バーニーは、片方だけになってしまった靴などいらないと、
事情を語りつつホームレスのバーバー(アンディ・ガルシア)に譲るのですが、
そのホームレス氏、TVの騒ぎを聞きつけて、
その靴を証拠に自分こそがその男と名乗り出てしまった。
この騒ぎをバーニーがTVで知ったのはもっと後のこと。
既にホームレス、バーバーは英雄に祭り上げられていて、
自分こそがヒーローだとバーニーが言っても誰も信用しない。


さあ、この取り違い劇の顛末は・・・?!
しかしその意外な成り行きがなかなか面白いのです。
バーバーはウソの名乗りをあげてしまったとんでもない奴なのですが・・・。
これが身なりをきちんと整えてみれば、
ハンサムだし、その言動は意外にも慎ましく高潔で、みなを虜にする。
他のホームレスの救済を訴えたり、
病気の子供たちを慰問したり・・・。
これが決して偽善ではなく、内面からにじみ出ているからすごい。
バーニーはぼやくんですね。
「人生は皮肉で複雑だ・・・。」
人は見かけでは解らないし、
善悪というのも一つの側面だけで判断すべきものではない・・・、

何が何でも本物は自分だと言い通さないバーニーもいいなあと思う。
変な勧善懲悪ものにならないのがいい。
ちょっと拾い物という感じの一作でした。

1992年/アメリカ/118分
監督:スティーブン・フリアーズ
出演:ダスティン・ホフマン、ジーナ・デイビス、アンディ・ガルシア、ジョーン・キューザック