医師の話ではない。人間の話をしているのだ。
* * * * * * * *
「神様のカルテ」第2弾。
信州の「24時間365日」対応という
過激な病院に勤務する栗原一止医師を中心とする物語。
一止はこの病院の方針に従い、実に過酷な勤務に従事しています。
ほとんど休みは取れないし、
休んだとしても、いつ緊急の呼び出しがあるか解らない。
ほとんど私生活は無いに等しい・・・。
そんな一止を気遣い、そっとやさしく見守るのが妻ハル。
あまりにも理想の病院、妻のありようは、
既にこれはファンタジーの域だろうと、私は思うのですが、
この巻では過酷な医師の勤務状況やその家族について、深く切り込んでいます。
一止の大学時代の友人進藤が東京の大病院から転勤してきます。
一止は学生時代から、この友人の誠実かつ優秀な医師への姿勢を頼もしく思っていたのです。
ところが予想に反して進藤は、
勤務時間終了と共に帰宅してしまうし、その後は全く連絡が取れない。
職場内での不満がたまっていきます。
しかし、実は勤務時間終了で帰宅というのは、当たり前のことなんですよね。
また、進藤は、全く無責任に患者を放りだしているわけではなくて、
緊急事態に備えて、かなり詳しい考え得る措置を書き残している。
だがしかし、当たり前のことが当たり前でなくなっている医療現場・・・。
何とかしてあげたい。
しかし、医師不足はすぐに解決出来ることでもない。
この矛盾はひたすら医師の奉仕で繕われているということです。
さて、でも実は進藤のこの勤務態度は、
3歳の娘を育てていることにあるということが解ってきます。
進藤の妻は、実は学生時代に一止が大いにあこがれた女性でもある。
その彼女も医師として勤務しているわけですが、
彼女はあることがきっかけで、ひたすら医師としての勤務を優先するようになってしまった。
娘のことは顧みず、仕事を人生のすべてにしてしまった。
ほとんど病的といっていいくらいに。
そうなると進藤の方に育児負担がのしかかってくるわけですが、
それではやはり自分の勤務がおぼつかなくなる。
やむなく進藤は、娘を連れて実家に引き上げてきたのですね。
まさに、家族をも引き裂いてしまう医師の過酷な勤務状況・・・ということなのです。
簡単に答えが出る問題ではありません。
けれど周囲の理解でほんの少し事態は進展。
こういうところも大事ですね。
ところでこの本にはずいぶん泣かされてしまいました。
この病院で亡くなる人が2人(いえ3人?)描かれています。
その場面では、文字がにじんできます。
人が亡くなること自体悲しいことですが、
その死を悲しむ家族や知人たちの悲しみを受けて、
こちらも泣けて来てしまうのです。
大切な人の存在が無くなってしまうとき・・・。
これ以上の悲しみはありませんね。
その命を守る仕事は・・・やはり尊いのです。
冒頭の御嶽山の描写、
コーヒー事件、
病院の屋上から見る満天の星。
印象深いシーンもたっぷり。
前作よりもさらにパワーアップ。
まさに感動の物語です。
「神様のカルテ2」夏川草介 小学館
満足度★★★★★
神様のカルテ 2 | |
夏川 草介 | |
小学館 |
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「神様のカルテ」第2弾。
信州の「24時間365日」対応という
過激な病院に勤務する栗原一止医師を中心とする物語。
一止はこの病院の方針に従い、実に過酷な勤務に従事しています。
ほとんど休みは取れないし、
休んだとしても、いつ緊急の呼び出しがあるか解らない。
ほとんど私生活は無いに等しい・・・。
そんな一止を気遣い、そっとやさしく見守るのが妻ハル。
あまりにも理想の病院、妻のありようは、
既にこれはファンタジーの域だろうと、私は思うのですが、
この巻では過酷な医師の勤務状況やその家族について、深く切り込んでいます。
一止の大学時代の友人進藤が東京の大病院から転勤してきます。
一止は学生時代から、この友人の誠実かつ優秀な医師への姿勢を頼もしく思っていたのです。
ところが予想に反して進藤は、
勤務時間終了と共に帰宅してしまうし、その後は全く連絡が取れない。
職場内での不満がたまっていきます。
しかし、実は勤務時間終了で帰宅というのは、当たり前のことなんですよね。
また、進藤は、全く無責任に患者を放りだしているわけではなくて、
緊急事態に備えて、かなり詳しい考え得る措置を書き残している。
だがしかし、当たり前のことが当たり前でなくなっている医療現場・・・。
何とかしてあげたい。
しかし、医師不足はすぐに解決出来ることでもない。
この矛盾はひたすら医師の奉仕で繕われているということです。
さて、でも実は進藤のこの勤務態度は、
3歳の娘を育てていることにあるということが解ってきます。
進藤の妻は、実は学生時代に一止が大いにあこがれた女性でもある。
その彼女も医師として勤務しているわけですが、
彼女はあることがきっかけで、ひたすら医師としての勤務を優先するようになってしまった。
娘のことは顧みず、仕事を人生のすべてにしてしまった。
ほとんど病的といっていいくらいに。
そうなると進藤の方に育児負担がのしかかってくるわけですが、
それではやはり自分の勤務がおぼつかなくなる。
やむなく進藤は、娘を連れて実家に引き上げてきたのですね。
まさに、家族をも引き裂いてしまう医師の過酷な勤務状況・・・ということなのです。
簡単に答えが出る問題ではありません。
けれど周囲の理解でほんの少し事態は進展。
こういうところも大事ですね。
ところでこの本にはずいぶん泣かされてしまいました。
この病院で亡くなる人が2人(いえ3人?)描かれています。
その場面では、文字がにじんできます。
人が亡くなること自体悲しいことですが、
その死を悲しむ家族や知人たちの悲しみを受けて、
こちらも泣けて来てしまうのです。
大切な人の存在が無くなってしまうとき・・・。
これ以上の悲しみはありませんね。
その命を守る仕事は・・・やはり尊いのです。
冒頭の御嶽山の描写、
コーヒー事件、
病院の屋上から見る満天の星。
印象深いシーンもたっぷり。
前作よりもさらにパワーアップ。
まさに感動の物語です。
「神様のカルテ2」夏川草介 小学館
満足度★★★★★