映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

エデンの東

2011年01月08日 | ジェームズ・ディーン
兄弟間の相剋、父への複雑な感情



            * * * * * * * *

さあ、ジェームズ・ディーンシリーズをはじめまーす!
といっても3作だけだから、一気に連続でいっちゃいますねー。
この作品ね、実はTSUTAYA DISCASで1位で予約登録しても、
なかなか順番が回ってこなかったんだよ。
そうしたら、たまたま「午前10時の映画祭」でやってた!!
だから、ちゃんとスクリーンで見ることが出来たんだ。
ラッキーだったな。
うん、結構席も満席に近くて盛況だったね。
まあ、中高年、特にオバサンがほとんどだったけど・・・。
まあ、人のことはいえないので・・・。

さてこの「エデンの東」がジェームズ・ディーンの初主演作。
この作品で彼は一挙にスターダムに押し上げられるんだね。
この役柄とジェームズ・ディーンのイメージが実にぴったりだったからね。
態度は粗暴だけど実はナイーブで孤独な美青年・・・
思い切り母性本能をくすぐるんだよねえ・・。だからだよ。


オホン。
まずは「エデンの東」というこの題名の意味は・・・?
これは、ジョン・スタインベックの小説が原作なんだけれど、
旧約聖書のカインとアベルの物語を下敷きにしているんだね。
カインとアベルはアダムとイブがエデンの園を追われた後に生まれた兄弟。
ある時二人はヤハウェの神に捧げ物をするのだけれど、
神はカインの供物を無視して、アベルの供物ばっかり褒めたんだね。
アベルに嫉妬したカインは、アベルを殺してしまう。
その罪により、カインはエデンの東の土地へ追放されてしまう。
そこから取った題名ということだね。
兄弟というのは人生で始めに出会うライバルなんだよね・・・。
人類初の殺人事件かあ・・・。
カインとアベルの名前はしばしば兄弟間の相剋を表す代名詞みたいに使われるよ。
そうなんだね。この作品で父親の名がアダム。
二人の息子がケイレブ(通称キャル)とアロン。
ということで、かなり原点を意識しているんだな。


舞台設定は1917年カリフォルニア北部。
父アダムは信仰深く、常に正しいことを行おうとする人物として描かれる。
兄アロンはそれにそっくりなんだね。
だから父親には受けがいい。すべて彼の期待通り。
だけど、弟キャルは粗暴でひねくれていて、だめな奴
・・・と、父親は思っている。
兄、弟って言うけど、この作品では双子ということになってるね。
うん、似てないから二卵性だね、きっと。
たぶん、年のせいでこうなってしまったのではなくて、
生まれながらの相違ということを強調したかったんだと思う。
それから、二人の母親は死んだと聞かされていたのだけれど、
実は、彼らが生まれてまもなく家を出て、今は近くの街でいかがわしい酒場を経営している。
この映画の冒頭は、そういう噂を聞いたキャルが母を訪ねるシーンから始まっているわけだ。
その母というのは、型にはまらないというか奔放な人なわけだね。
うん、つまり、あまりにも堅苦しくて“正しい”夫に耐えられず、家を出たんだね。
そのとき夫が引き留めようとしたので銃で撃った・・・というから半端じゃない。
キャルはその母の気性を強く受け継いだといえるわけだ。
そうだからこそ、父に受け入れられないのだということも解ってくる。
でも、彼には自分自身の存在をまず受け入れてくれる存在が必要だったんだよ。
自己がきちんと形成されるためには、やはりそれは大切なことなんだよね・・・。


父は、レタスを冷凍保存して売り出すことを考えた。
冷凍・・・というよりは冷蔵だね。
今なら当たり前の話だけど、当時それは斬新なアイデアだ。
でも、列車が雪崩のために不通になってしまい、氷がとけて貨物列車何両分ものレタスが腐ってしまう・・・。
相当な財産を失ってしまうんだ。
そこでキャルはある人の言葉を思い出す。
今の戦争(第一次世界大戦)に、まもなくアメリカも参戦するだろうけれど、
そうなると穀物の需要が伸びて儲かる、と。
彼は父親を喜ばせたいあまりに、母からお金を借りて大豆相場に手を出す。
そしてそれは見事に成功するわけだ。
父の誕生日、彼はその儲けたお金をプレゼントとして用意する。
そして兄のアロンもまた・・・。
ここのところがまさしく、カインとアベルが神に供物を捧げる場面と重なるわけだね。
まあ、だから結果も想像がつくよね・・・。


でもこの作品では、兄の恋人アブラという女性が唯一キャルを理解していて、
次第に二人が惹かれていく、というところがまたステキだよね。
そうだね、あの観覧車の二人のシーン、いいよねえ・・・。
女としてはさ、やっぱりあのまじめ一方の堅苦しいアニキより、
ちょっぴり危険な香りがするオトートの方がいいよなあ・・・。
気持ちが揺れ動くのも無理はない・・・。


この作品以来、できのいい兄とだめな弟、兄の恋人に密かにあこがれる弟・・・
そういう構図を持つ物語がたくさん誕生したと思う。
これも世界共通、古今の人の普遍的な物語でもあるんだろうなあ。
私が連想するのは吉田秋生さんの「カリフォルニア物語」だけど・・・。
ああ、これもカリフォルニアなのか。
やっぱりエデンの東を意識した作品なんだね。


まさに、名作。すごくいい物語なんだけどね、私が気に入らないのは音楽。
あの有名なメインテーマの旋律はいいよね。
けどこの映画全体のバックミュージック、これがどうにもオーバーというか重すぎるというのかな、なんか違和感を覚えちゃう。
いや、当時としてはこれが普通だったとは思うけどね。
うーん、音楽だけでもろに古色蒼然としてしまうんだなあ・・・。
他のシーンは充分いけるとおもうけど。
音楽だけ入れ直したら、もっと良くなると思うけどなあ・・・。
そんなことしたら、エリア・カザンの冒涜だって言われちゃうって・・・。

エデンの東 [DVD]
ジェームス・ディーン,ジュリー・ハリス,レイモンド・マッセイ
ワーナー・ホーム・ビデオ


1955年/アメリカ/115分
監督:エリア・カザン
原作:ジョン・スタインベック
出演:ジェームズ・ディーン、ジュリー・ハリス、レイモンド・マッセイ、ジョー・バン・フリート