映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ヘルプ 心がつなぐストーリー

2012年04月03日 | 映画(は行)
負の連鎖を断ち切るには・・・



                        * * * * * * * * * *

1960年代。
アメリカ南部ミシシッピーが舞台です。
大学を出たスキーターは作家志望。
白人社会におかれた黒人メイド達の立場に疑問をいだき、
彼女らにインタビューしようとするのですが、
白人の報復を恐れる彼女たちは口を閉ざすばかり。
でもある時、不当解雇を受けたミニーの親友エイビリーンが、真実を語り始めます。


映画中にも触れられていましたが、アメリカ南部で黒人のメイドと言うと、
私は「風と共に去りぬ」を思い出してしまいます。
その中でかなり大きな存在感を持っていたオハラ家の黒人メイド、マミー。
当然その頃のことですから、まだ「奴隷」の位置づけだったのだろうと思います。
けれど、作中のマミーは、大らかで言いたいことをズケズケ言うのが、なかなか心地よかったのです。
またその主人は彼女の生活自体にも責任をもっているように見受けられました。


そうして時は流れ、とっくに奴隷制度など廃止されて久しいというのに、
この南部では黒人たちの事情はあまり変わっていなかったのですね。
女たちの仕事といえばほとんどこの「メイド」しかなく、
ひどい差別にさらされている。
黒人専用の店があったり、
作中では、働いている屋敷のトイレは使わせず、別の黒人専用トイレを作るよう法を定めようなんて運動が起こったりします。
同じトイレでは不衛生だなんていうんですよ。
そしていかにも身勝手にクビを言い渡すようなところは、
奴隷の生活まできちんと面倒をみるのが義務であり務めであった昔よりも
状況が悪いともいえるのです。
もちろんそんなモラルも持ち合わせない「主人」も多くいたでしょうけれど。
このような全く理不尽な差別にも、ひたすら耐えるほかない彼女たち。
けれども、エイビリーンたちは、自分の仕事に誇りを持ち、ユーモアを忘れません。
さすが、オハラ家のマミーの末裔であります。



「どんなに頑張っても、私たちは今の生活から抜け出せない」
黒人の子供達を前に、そのようにつぶやくエイビリーンの姿には胸を打たれます。
だからこそ、彼女は一大決心をするのですが。
南部では当たり前の光景に疑問を持ち、斬り込んでいくスキーターと、
勇気を出し声を上げていこうとするエイビリーンやミニーたち。
声高に政治的な動きはしませんが、
身の回りのおかしなことを変えていこうという「女性」たちのストーリー、
とても馴染みやすく、するりと胸に染みこんでいきます。



お屋敷の若奥様代表、ヒリーが「アフリカの子供たちのために」慈善バザーをする
なんていうのがものすごい皮肉でした。
そして彼女に関わる最も強烈なエピソードについては、
ぜひご自分で確かめてください!!



それから、女性は高校を出るとすぐに結婚して子どもを持つというのがスタンダードなその頃のその街で、
大学を出て、さらに仕事を持とうというスキーターも私は大好きです。
彼女は、以前からそんなふうで、周りからちょっと浮いていたんですね。
そんなことで落ち込んでいた彼女を
励まし勇気づけてくれたのが彼女の黒人の乳母だったわけです。
男っ気のなかった彼女がようやく付き合い始めた彼は
「思ったことをはっきり言う君が好き」といってくれます。
結構いいヤツ?と思えるのですが・・・、
この結末も乞うご期待。


「ヘルプ 心がつなぐストーリー」
2011年/アメリカ/146分
監督:テイト・テイラー
原作:キャスリン・ストケット
出演:エマ・ストーン、ジェシカ・チャステイン、ビオラ・デイビス、オクタビア・スペンサー、ブライス・ダラス・ハワード、アリソン・ジャネイ