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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

おとなのけんか

2012年04月27日 | 映画(あ行)
子供そっちのけ、おとなのバトル



                  * * * * * * * * * *

この作品、登場人物は二組の夫婦で、4人のみ。
舞台となるのも夫婦の家の室内だけ、
そしてリアルタイムで会話が続きます。
この作りでピンと来るのですが、これは舞台劇を映画化したものですね。
ヤスミナ・レザ舞台劇「大人はかく戦えり」。



子供同士の喧嘩を解決するため、2組の夫婦が顔を合わせるのです。
はじめはおずおずと言葉を選び、
お互いの気分を害さないようにと、努めて理性的に話が進みます。
ところが、次第にそれぞれの本性があらわになり、互いに言いたい放題、
しまいにはそれぞれの夫婦間にも不協和音。
なんともみにくく悲惨な会見となっていきます。
おとなといっても、結局子どもと変わらない。
いえ、子どもよりも始末が悪いでしょうか。
これまでのその人の考え方・生き方がさらけ出され、その事への中傷までもがあからさま。
やっている本人たちはたまったものではありませんが、
しかし、これを他人事としてはたから見ている分には、非常に面白い!!
79分という短さもありまして、
言葉の応酬に呆れているうちにあっという間に幕になってしまいました。



特に私は、ケイト・ウインスレットから目を離せないでいました。
彼女と夫は加害者の方の少年の親で、まあ、一応お詫びに来たのですよね。
だから緊張するし、居心地も悪いし、できるだけ早く切り上げたい。
それで何度も彼らは帰りかけて、エレベーターの前まで行ったりするのですが、
そのたびに議論が再燃。
その都度何度もコートを脱いだり着たりする彼女が可笑しいし、
ついに具合が悪くなってしまうシーンにはこちらもびっくり。
それでもなお、今度はお酒をがぶがぶ飲んでしまうというのがまたすごい!!!
結局双方、父親はこの会見には気乗りがしないところを、
奥さんに責められて同席したというのも見えてきます。
終いには男同士なんだか気があって、
お酒や葉巻を分けあったりするのですが、
しかし、女同士は全く気が合わない。
どうなんでしょ、ここはリアルなんでしょうかねえ・・・?



この作品、肝心の子供はオープニングとエンディングに、遠景があるだけです。
子供そっちのけの、大人のバトル。
非常に皮肉ですが、
いやしかし、面白い。
でも、救いなのは、結局彼らは暴力には訴えません。
そこで踏みとどまれたのは、さすがに“おとな”なのか・・・。


「おとなのけんか」
2011年/フランス・ドイツ・ポーランド/79分
監督:ロマン・ポランスキー
原作:ヤスミナ・レザ
出演:ジョディ・フォスター、ケイト・ウインスレット、クリストフ・ワルツ、ジョン・C・ライリー