映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ももへの手紙

2012年05月11日 | 映画(ま行)
島の風土に癒されて



                 * * * * * * * * * 

小学6年生の少女ももは、ケンカして和解しないまま父親を事故で亡くしました。
その後、母のいく子と共に親戚のいる瀬戸内海の汐島に越してきます。
父は「ももへ」とだけ書いた手紙を残していましたが、
その後に父が何を言いたかったのか? 彼女は自身に問い続けます。
さて、越してきた家はもうずいぶん古い家。
ももはそこで奇妙な気配を感じます。
それは、「見守り隊」と名乗る3人組の妖怪、イワ、カワ、マメ。
大切な人を亡くした母子が、どのように新しい生活へ立ち向かっていくのか。
瀬戸内海の美しい自然を背景とした再生のドラマです。



3人の妖怪は、本当はこの家にあった古い「妖怪」の本に描かれた姿を借りただけ。
本当は空からの使者ともいう存在。
更に今作では土着の不思議な「モノ」たちも登場します。
この土地の自然の精が形を表したものとでもいいましょうか。
これは「となりのトトロ」の中のトトロとかマックロクロスケにも通じます。
人と自然が区別がつかないほどに融和して暮らしていた長い歴史の中で、
そういうものが生きてきた感じがします。
この島の風土あってこその彼ら“もののけ”なんですね。
正直、北海道ではそういう存在があるような気がしない。
(いるとすればフキの下の神様、コロボックルかな?)
やはり、風土の違いを感じます。



ストーリーはちょうど夏休みで、学校の光景は出て来ません。
でも、同い年の少年と知り合い、泳ぎに誘われますが、
彼らの泳ぎとは、橋からはるか下の川面に飛び込むこと。
彼らの仲間と打ち解けることも、飛び込む勇気も持てないもも。
しかし家にいればまた、父とケンカ別れしたことを悔やむばかり。
子供だって、悩みがいっぱいで大変です。
でも、気丈に見えるお母さんも、実は未だ夫を亡くしたショックから立ち直れていないのですが、
自分のことで精一杯のももには、それが見えません。
それも無理はありませんけれど。



ももは「見守り隊」に助けられながら、(と言うよりは世話を焼きながら?)
大人への道を踏み出すわけですが、
でもこれは、本当は彼女が自分で起きて立ち上がったということなのでしょう。
彼女を癒したのは、この島の自然と、人々。
終盤の山場はかなりダイナミックなシーンで、ワクワクさせられます。
これぞアニメの力ですね。
彼ら“もののけ”の結界はこの島のなかだけ、というのも見て取れました。



山頂から見る美しい光景に目を奪われます。
心地良く吹く風をさえ感じるような・・・。
恥ずかしながら瀬戸内の海を私はまだ訪れたことがなく、
いつかぜひ行ってみたいと思いました。

「ももへの手紙」
2012年/日本/120分
監督:沖浦啓之
出演(声):美山加恋、優香、西田敏行、山寺宏一、チョー