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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ウォルト・ディズニーの約束

2014年04月02日 | 映画(あ行)
メリー・ポピンズは子どもたちを救いに来たのではない



* * * * * * * * * *


1964年、ディズニーのミュージカル映画「メリー・ポピンズ」の制作秘話。
ウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)は
娘が愛読している児童文学「メリー・ポピンズ」の映画化をかねてから熱望していました。
でも、原作者であるパメラ・トラバース(エマ・トンプソン)にそのことを打診するのですが、
彼女は頑なに断り続けているのです。
しかし、この度とうとう、本人がイギリスからロサンゼルスへやって来た!!
ところが彼女は、書類にサインをしないままに
映画製作陣の脚本のアイデアをことごとく却下。
とにかく頑固なガミガミ婆さんに、スタッフはお手上げ状態なのでしたが・・・。



本作の主役はウォルト・ディズニーではなく、あくまでもパメラ・トラバース。
映画の苦労話とかディズニーの成功譚ではなく、
トラバースという一人の女性の心の開放を描いた物語。
というと多くの皆様の期待はしぼんでしまうでしょうか。
でもこれが素晴らしく感動的なのです。
むしろ、ここに焦点をあてたからこそ
深い物語になりました。


映画製作の話の合間にトラバースの少女時代のできごとが挿入されています。
彼女が育ったのはオーストラリア。
ユーモアがあって、彼女を夢の世界へ誘ってくれるお父さん(コリン・ファレル)が大好きでした。

けれどお父さんは、子供のあしらいは上手いのですが、
それはつまり自分自身が子供のようだったからに他なりません。
銀行員ではありますが、勤め人には全く向かず、
一人の大人としても破綻しかけています。
そういう父親への複雑な思いが「メリー・ポピンズ」に反映されている。
そういうことが少しずつわかってくるのですね。
構成が素晴らしくいいと思いました。


どうしてそんなにまでトラバースが自分の「メリー・ポピンズ」に固執するのか。
いつもNO!しか言わない頑固な老女に、
私達は事情を知るに連れ、次第に共感を重ねていきます。
最後に単身ロンドンのトラバースを訪ねたディズニーが、
語りかける言葉の柔らかさがまた胸を打ちますねえ・・・。
さすがのトム・ハンクス。
ちょっぴりディズニーの子供の頃の話が挿入されているところもいい。
決して恵まれた家庭ではなかった、ということです。
そして、トラバースもこの映画製作に関わることで、
自身の抱えていたトラウマから開放されていく・・・。
心温まる感動に満ちています。

作中で、トラバースは「メリー・ポピンズは子どもたちを救いに来たわけじゃない!」といいます。
ディスニーのスタッフは、「子どもたちを救いに来た」と思っていたのですが。
では一体、誰を?
作品を見ていけば答えは明らかですが
こうしたやり取りによって、より作品に深みが出て行く。
曲が出来上がっていく様子も非常に楽しめますね!



さて、「メリー・ポピンズ」。
私は、子供の頃見たきりでした。
是非もう一度ちゃんと見なければ・・・。


「メリー・ポピンズ」
2013年/アメリカ/126分
監督:ジョン・リー・ハンコック
出演:トム・ハンクス、エマ・トンプソン、ポール・ジアマッティ、ジェイソン・シュワルツマン、コリン・ファレル