映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ワタシの川原泉Ⅱ」 川原泉

2014年04月03日 | コミックス
元祖“テッド”は、数段格上

川原泉傑作集 ワタシの川原泉II (花とゆめCOMICSスペシャル)
川原泉
白泉社


* * * * * * * * * *

シリーズの2巻目です。
冒頭は「オペラ座の怪人」。
本作は「笑う大天使」シリーズの続きとして描かれたものですが、
独立しても十分読み応えがありました。
柚子さんが福引でイングランドの旅の旅券を手に入れ、
それならばということでロレンス先生の実家に泊めてもらうことにします。
なんとそれは片田舎ではあるけれど、立派な貴族のお屋敷・・・。
柚子さんはそこで、
ロレンス先生の親友で新進気鋭のオペラ歌手ラインハルト(通称おハルさん)に出会います。
一人の大人としてはやや心もとないおハルさん。
しかしそこへ、動くくまのぬいぐるみ登場!!
本作も読んだことがあるのに忘れてましたねえ。
"テッド"の映画を見た時に、なぜこれを思い出さなかったのか。
おハルさんが子供の頃から常に一緒に居たテディ・ベア。
それはもう控えめで上品で優しく、
映画のテッドとは似ても似つかぬ、
というより数段品格が上。
なーんだ、こんなところに"テッド"以上の存在が以前からあったんだ・・・。
このとぼけた顔のクマさんがまた、
ラストで私達を思い切り泣かせるのです・・・。
はあ、切ない。


「ヴァンデミエール 葡萄月の反動」では
大の27歳の男が突如大人になってからの記憶を喪失し、
小学生の心に戻ってしまうというオハナシ。
蕗子さんは夏休みのバイトで、この27才の小学生覚(さとる)くんのお世話をすることに。
近所の本物の小学生も交えて、
虫取りやメンコ、三角ベース、ビー玉。
楽しい夏休みを過ごしていたのですが・・・。
覚がなぜ小学生に戻ってしまったのかという事情も切ないし、
蕗子さんが、せっせとバイトしてお金を稼がなければならない事情というのも
また切ないのです。
そういえばこの二人もまた「欠損」を抱えているのでした。
バイト先の人員整理でクビにされてしまった蕗子さん。

「先の事考えるとムネがつぶれそーだ。
ああどーしよう。
ううっ。
私が3人いて一日が30時間だったらもっと働けるのに。
一生懸命やればなんとかなると思ったんだけどな・・・
精一杯頑張ったんだけどな・・・
だけど今日のよーな日はちょっとくたびれる。
・・・5分。
5分だけ休憩しよう」

と、街角の階段に腰掛ける蕗子さん。
まだ高校生ですよ・・・。
こちらの胸のほうがよほどつぶれそーです。

兎にも角にも、川原ワールドに思い切り浸れる2冊。
オススメです。


「ワタシの川原泉Ⅱ」川原泉 白泉社
満足度★★★★★