映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「つながる図書館―コミュニティの核をめざす試み」猪谷千春 

2014年04月15日 | 本(解説)
やっぱりカフェは欲しい

つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)
猪谷 千香
筑摩書房


* * * * * * * * * *

最近、あなたの町の図書館に変化が起きてはいないだろうか。
二十四時間貸出しが可能だったり、
自動貸出機があったり、
ビジネスや法律の相談もできたり、
デジタルアーカイブが充実していたり。
公共図書館はいま、無料貸本屋から脱して、
地域を支える情報拠点としての施設にシフトし、
町づくりの中核に図書館を据える自治体も登場している。
年齢や、職業収入の差別なく、すべての人に開かれている無料の公共施設。
私たちの人生にチャンスを与え、
私たちの暮らす町をより豊かにする可能性を秘めている場所。
そして社会の記憶集積装置。
変わりつつある図書館の最前線へ出かけてみよう。
いざ、図書館へ!


* * * * * * * * * *


私、図書館は好きな場所ではありながら、
そういえばしばらく行っていないような気がします。
というのも、手近なところにはないし、開館時間が限られている・・・。
もっと便利な場所で、仕事帰りにも寄ることができる時間に開いている図書館があればいいのに
・・・とは、常々思うところです。
(札幌市の中央図書館はそういう点では及第ですが、何しろ遠い・・・!) 
しかし実は今どきの図書館は、そんな些細な要求に答えることはごく序の口で、
もっともっと進化しているのだ・・・ということがよくわかる本です。


かつて公立図書館は「無料貸本屋」などといわれていたそうですが、
最近は「課題解決型」を目指しているといいます。
地域のニーズに根ざした産業やビジネスの情報を得るところ。
そして時には発信する所。
そしてさらに大きな転換を招いているのが「指定管理者制度」。
公の予算で設置した図書館の運営をNPOや民間に任せるというものです。
この事については賛否両論。
民間にそんなことを任せたら、恣意的な統制や情報操作がなされるのではないか・・・
そんな危惧はたしかにあります。
また、予算の面だけを見て運営を民間に丸投げした挙句、
業界の人々の壮絶なワーキングプアを招いたという実例もあるそうで・・・
ちょっと怖いですね。


でももちろん成功例もあります。
最近話題となりTVなどでも紹介されていた佐賀県の武雄市図書館。
スターバックスと書店が併設されていて、カードを利用するとポイントが付くという。
私などからするとちょっと魅力的です。
その同じ佐賀県に、こちらは完璧に市として
「自由で公平な資料と情報を提供する」とうたっている伊万里市民図書館があります。
ここでは有川浩の「図書館戦争」のことにも少し触れられていたのが嬉しかった。
いずれにしても、設置者、運営者のしっかりしたミッションがなければダメだということなのでしょう。
ただ本を揃えて貸し出すのではまさに「無料貸本屋」。
そうではなくて、どういう人達のどんなニーズに答えようとするのか。
公共団体として、どういう人を育成したいのか。
図書館をどんな場所としたいのか。
これらによって、いろいろな特色のある図書館があっていいのではないかと思う次第。


私の望む図書館は・・・
歩いていけるところにあって(ということは区に一箇所くらいずつなければダメ?)、カフェ併設。
ついでにプールとかスポーツジムもあるといいな。
本を読んで目が疲れて肩が凝ってきたら、運動して汗を流す。
図書室を見下ろす回廊をウォーキングコースにしたりする。
ちょっとしたサークル室や音楽室、ホールもあって・・・。
あ、これでは「図書館」ではなくて、地域センターか。
まあ、どちらでもいいのですけどね。
つまりは地域コミュニティのための場でもある、
というのが、やはり今どきのテーマであります。
エントランスのホールでは時々地元野菜の販売をしたりもする。
イベントは、異年齢の人々の交流できる内容で・・・、
スタッフはボランティアを多く取り入れて・・・等など・・・
えーい、いっそこの巨大地域センターの中に、
学校や保育園も一緒に入れちゃってください!!
図書館は共有できるし、音楽なんか一般の方々と一緒に楽しむのはどうでしょう?
素敵な場所になると思いますけどねえ・・・

「つながる図書館―コミュニティの核をめざす試み」猪谷千春 ちくま新書
満足度★★★★☆