映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

小野寺の弟・小野寺の姉

2014年11月08日 | 映画(あ行)
“ありがとう”の香り



* * * * * * * * * *

両親を早くに亡くし、二人で暮らす、33歳弟・進(向井理)、40歳姉・より子(片桐はいり)。
この2人の物語です。
「間宮兄弟」を連想しますが、
イタい男二人よりは、さすがに姉と弟のほうが花がある・・・?
いやいや、いくらダサく決めようとしても、
向井理さんのカッコよさは隠しようがありませんが。
(この姉弟のご両親、きっとごっつい顔のお父さんと、
たおやかで優しい顔をしたお母さんなんだろうなあ・・・)



引っ込み思案で奥手な弟・進は過去の失恋の痛手から抜け出せない様子。
それを案じた姉・より子は、
なんとか彼に新しい恋をはじめさせようとします。
一方、より子自身も自分に自信がなく、
片思いの相手に思いを告げることすらも諦めている・・・。
互いに人生に不器用。
そういうところはよく似ています。
ある時、一通の手紙の誤配から、物語は動き始めます。



本作は西田征史さん脚本・演出で2013年に上演された舞台の映画化。
西田氏初監督の映画作品。
主演二人は本作と同じだそうで、う~ん、ぜひ見たかったなあ・・・。
北海道なんかに住んでいると、そういうものからは遠くて・・・(T_T)



本作、ストーリーとしてはありがちな感じなのですが、
仕組まれたアイテム・エピソードが心憎く涙腺を刺激します。

進の失恋の理由。

進の“畳の裏貯金”の意味。

より子が自信喪失している理由。

より子が思わず泣き崩れてしまうきっかけになる“花”。

より子が泣いているところへ帰宅した進の行動。

中学時代の思い出話に必ず出てくる、とぼけた教師の登場。

こういったエピソードの配置が絶妙。
実にうまくツボをついていて、すっかりやられました。
調香師としての進のテーマが「ありがとうの香り」を探すことなのですが、
ラストでその答えが出るところもオシャレです。
ありがとうの香り。
それは日常の生活の中にいつでもそこにあるもの・・・。
あー、私もこんな弟というか、息子でもいいから欲しいなあ・・・



「小野寺の弟・小野寺の姉」
2014年/日本/114分
監督・原作・脚本:西田征史
出演:向井理、片桐はいり、山本美月、及川光博、ムロツヨシ
おかしみ&お涙度★★★★★
満足度★★★★★