映画と本の『たんぽぽ館』

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「せいめいのはなし」福岡伸一

2014年11月21日 | 本(解説)
絶え間なく変化していくことが、生きていること

せいめいのはなし (新潮文庫)
福岡 伸一
新潮社


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「お変わりないですね」と言っても、実は「お変わりありまくり」―。
生物が生きている限り、半年も経てば体を構成する原子はすっかり食べたものと入れ替わる。
絶え間なく入れ替わりながら、常にバランスがとれているという
生物の「動的平衡」のダイナミズム。
内田樹、川上弘美、朝吹真理子、養老孟司。
好奇心溢れる4名との縦横無尽な会話が到達する、
生命の不思議の豊かな深部!


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生物学者、福岡伸一さんと、
内田樹、川上弘美、朝吹真理子、養老孟司4名との対談集です。
テーマは「生命のはなし」。


福岡伸一さんは「動的平衡」という論を説いています。
すなわち、私達の体はものを食べて、それをエネルギーとして生きているのだ・・・と、
なんとなく思っているのですが、
そうではなくて、食べ物を構成する原子は
私達の体の中に取り入れられて行く。
「生きている」ということは、
体の中で合成と分解が絶え間なくグルグル回っているということ。
「動的平衡」とはこのように、
それを構成する要素が、絶え間なく消長、交換、変化しているにもかかわらず、
全体として一定のバランスが保たれるシステムのこと。
それぞれの方との対談の中で、
生物学のみならず、経済学、哲学や文学にまで話は広がりながら
「動的平衡」を考えていきます。


半年もすれば、体を構成する原子はすっかり入れ替わる・・・? 
ふしぎですね。
今の自分は以前からの自分と変わらないと思っていましたが、
実は「お変わりありまくり」。
一年前の自分とはまるで別物。
なのに、やっぱり自分は自分。
生命というのは不思議なことばかりです。
細胞は、生まれた時にどこそこのパーツと決められているわけではなくて、
周りの細胞との関連の中で、どのような細胞になるのか決まっていくそうです。
つまり細胞が周りの空気を読んでいる。
う~ん、まるで人と人との関係のようでもある。
深いですねえ・・・。
私には若干難しいところもありますが、とても興味深い話の数々でした。


また、福岡伸一さんは、銀座にフェルメール・センターというのをつくっています。
フェルメール作品の本物を全部集めるなんていうことは
費用の面からもとてもできないので、
最先端技術で複製を作り、それを作成順に並べてあるそうなのですね。
そうすると、フェルメールの「変化」がわかる。
スゴイですね。この発想。
私もぜひ観てみたくなりました。


科学は深めると哲学になっていくのだな・・・。
こういう話はちょっと好きです。


「せいめいのはなし」福岡伸一 新潮文庫
満足度★★★★☆