映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

スタンリーのお弁当箱

2014年11月19日 | 映画(さ行)
なんてけなげな子どもたち



* * * * * * * * * *

この子どもたちの特上の笑顔に惹かれて、拝見。



スタンリーは想像力・表現力に優れていて、
お話がうまいので、みんなの人気者です。
けれどスタンリーは家庭の事情で学校にお弁当を持ってくることができず、
お昼の時間は水を飲んでお腹をふくらませていました。
それに気づいた級友たちは快くお弁当を分けてくれます。
ところが、そんなところを見た食い意地の張った教師が、
「お弁当を持ってこないのなら学校に来る資格はない!!」
と言い放ちます。
そのため、スタンリーは学校に来られなくなってしまいますが・・・。


始めに登場したスタンリーの目のまわりにアザ。
顔に泥もついています。
なんだか嫌な予感・・・。
けれどもスタンリーがあまりにも屈託なく明るいので、
そんなことは忘れてしまいます。
本人はお父さんが遠くに仕事に出て、お母さんもそちらに行っているので、
お弁当を作ってくれる人がいないなどと言っていますし・・・。
でも本作、最後の最後に種明かしのように、
本当のスタンリーの事情が明かされるのですが、実に、切ない話・・・。
それなのに、いつも明るくて級友や教師たちにさえ困ったところを見せようとしない。
スタンリーのけなげさにホロリとさせられます。
そして、今やこんなにも近代化が進んでいるインドも、
まだまだ厳しい現実が横たわっているということも改めて知りました。



けなげさといえばスタンリーの級友たちのけなげさもまた、
今どき日本の作品なら絶対こんな善良なだけの子どもたち
という設定なんかないでしょうね。
でもあえてこんな風に、
みんなスタンリーを気遣うステキな仲間たちというのが素敵です!!
そしてまた、子供より程度の低い
あの食い意地の張った教師のバカさ加減には呆れてしまいます・・・、
が、なんとこの役は監督本人が演じていたんですね!!
まあ、オーバー過ぎる演出ではありますが、
監督自らの役となればそれもよし・・・と思えてきました。


もともと本作は素人の子どもたちを集め、
ワークショップと称してこっそり撮影を続けたそうなのです。
が、子どもたちが教師を睨む目つきなど、なかなか決まっていましたね。
あの、「めぐり逢わせのお弁当」にも出てきた豪華4弾重ねのお弁当も登場。
みんなでわけあって食べたら、やっぱり美味しそうですね!!



余談ですが、この頃インド作品を見ることも多いのですが、
その中の会話の英語率の高さに驚いています。
インドは元イギリス領ということもあるのでしょうけれど、
本作の学校も授業はほとんど英語でした。
監督が演じていた教師の教える「国語」だけが、インドの言葉。
インド語というのはなくて、代表的なのがヒンディ語だそうですが、
地方によって、「方言」どころではない言葉の違いがあるそうなのです。
だからいっそ英語のほうが通じる、という事情もありそう。
若干調べてみましたが、公立の学校は多くは地元の言葉が使われているようですが
私立の学校はほとんどが全て英語による授業とのこと。
それってつまりは、裕福な家庭・上流階級ほど英語率が高いということ。
だからあの「マダム・イン・ニューヨーク」のシャシの
英語ができないコンプレックスというのは
日本で私が、「英語が苦手だ~」というのよりもずっと根深いものがあるのです。
「めぐり合わせのお弁当」の中では、サージャンは会社の仕事は
英語を使っていたような記憶があるのですが・・・。
ビジネスも一流どころは、英語が普通なのかもしれません。
そこで私はふと思ってしまうのです。
今日本では小学校の低学年から「英語」を教科として位置づけようとしています。
これってつまりは、英語において、日本もインド化しようという政府の目論見なのか・・・?
いいことなのか、悪いことなのか・・・判断がつきかねますが。
でも多分、ますます貧富の格差=教育の格差となり
英語ができない=貧乏人=給料のいい職につけない
という図式がくっきりしてくるような気がします。

スタンリーのお弁当箱 [DVD]
パルソー,デイヴィヤ・ダッタ,ラジェンドラナート・ズーチー
角川書店


2011年/インド/96分
監督・脚本:アモール・グプテ
出演:パルソー、マヌーン、アビシェーク、サイ・シャラン、モンティー