映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ウィンター・ホリデー」 坂木司

2014年12月14日 | 映画(あ行)
働くことは人とつながること

ウィンター・ホリデー (文春文庫)
坂木 司
文藝春秋


* * * * * * * * * *

元ヤンキーでホストだった沖田大和の生活は、
小学生の息子・進が突然に夏休みに現れたことから一変。
宅配便のドライバーへと転身し子供のために奮闘する。
そして冬休み、再び期間限定の親子生活がはじまるが、
クリスマス、お正月、バレンタインとイベント盛り沢山のこの季節は、
トラブルも続出で…。


* * * * * * * * * *

宅配便のドライバー大和と、
離れて暮らす息子・進のストーリー「ワーキング・ホリデー」の続編です。
前作は一夏の出来事で、本作はその冬。


ヤマトを取り巻く人達の個性豊かでいて
ふんわり包み込むような距離感は、前作そのまま。
やはり、なんだかじんわり嬉しくなってしまうストーリーです。


ある時、ヤマトの配達先で、
いかにも今どきの大学生が「仕事、楽しいっすか」と聞きます。
思わず「楽しいですよ。」と答えるヤマト。
「好きだから。
 人とか、仲間とか、そういうのをひっくるめて」
とっさにそう答えたあとで、自分自身戸惑うヤマト。
今までそんなこと考えたこともなかったけれど、
自分はこの仕事が好きなのか、と。
やっぱり、お仕事小説なんです、基本。
こうやって職場の人達と一生懸命に働くのっていいですよねー。
そんなヤマトだからこそ、進君も好きなのに違いありません。


しかし、この大学生の登場は伏線でありまして、
後に「ハチさん便」のヤマトのいる営業所に
バイトで入ってくるという展開がしゃれています。
前作で、進君のお母さんとヤマトの距離はちっとも縮まらなかったのですが、
本作はもちろんその後の進展らしきものもあり、
けれども、目的のゴールには至りません。
いや、いいんじゃないでしょうか。
結婚=ゴールという定石をあえて外したところがいいと思います。
今、家族の形は多様。
だから無理に急いで結婚しなくても。


「ウィンター・ホリデー」坂木司 文春文庫
満足度★★★★☆