映画と本の『たんぽぽ館』

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「高原のフーダニット」 有栖川有栖

2014年12月31日 | 本(ミステリ)
おススメは夢十夜

高原のフーダニット (徳間文庫)
有栖川 有栖
徳間書店


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「先生の声が聞きたくて」
気だるい日曜日、さしたる知り合いでもない男の電話。
それが臨床犯罪学者・火村英生を血塗られた殺人現場へいざなう一報だった。
双子の弟を殺(あや)めました、男は呻(うめ)くように言った。
明日自首します、とも。
翌日、風薫る兵庫の高原で死体が発見された。
弟と、そして当の兄の撲殺体までも……。
華麗な推理で犯人に迫る二篇に加え、話題の異色作「ミステリ夢十夜」を収録!
名探偵火村英生・作家有栖川有栖コンビの新たな醍醐味、全3編!

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有栖川有栖氏作品は、やっぱり火村准教授と有栖川有栖のコンビがいい。
改めてそう思いました。
本作は3編の中編からなりますが、
一作目、「オノコロ島ラプソディ」はやや拍子抜けの感あり。
舞台は淡路島というのも、ちょっと旅情を誘われて、それはいいのですが、
このアリバイ作りのやり方というのがあまりにも・・・。
うそ~!と言いたくなってしまうくらい納得出来ないものではありました。
まあ、数あるトリックの中にはこんなのもありか、
というくらいの笑って済ますべき作品・・・かな?


でも次の「ミステリ夢十夜」、私はこれが一番好きです。
その題名からして分かる通り、
すべて「こんな夢を見た」から始まる夢のお話。
有栖が事件の犯人にされたり、殺されかけたり・・・
まあ、夢なので散々な目に合うのですが、通常ありえないからこそオモシロイ。
イマジネーション豊かな10話をたっぷり楽しめます。


最もミステリ的なミステリは最後の「高原のフーダニット」。
フーダニットは、ミステリ通の方ならいうまでもありませんが、
Who done it、
誰がやったのか、つまり犯人は誰かというミステリの基本ですね。
双子の兄弟の片方が、もう片方を殺してしまったという告白の電話が火村のところにあり、
しかしなんとその本人もまた殺されてしまった。
犯人はその高原に住む一定の人々に限られる。
さあ、犯人は誰か。
コンビの掛け合いの中から少しずつ謎が解き明かされていく。


つまり色々なスタイルのミステリを楽しめる一冊でした。

「高原のフーダニット」有栖川有栖 徳間文庫
満足度★★★☆☆