映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ダーク・ブラッド

2014年12月25日 | 映画(た行)
青年の孤独と狂気



* * * * * * * * * *

本作は、1993年23歳で亡くなったリバー・フェニックスの遺作です。
本作の撮影中に亡くなったため未完のままとなっていましたが、
近年大病を患い余命宣告を受けた監督が、
キャリア最後の作品として取り組み完成させたという作品。
そのため、撮影できなかった部分をナレーションで補っている部分もあります。
冒頭で監督自身が、
「本作は脚が2本しかない椅子に、もう一本の足を加えたようなものだ」
と述べていました。
3本の足で何とか立っているけれども、
永遠に4本の足にはならない、と。



かつて核実験場だったアメリカの砂漠。
ハリウッドから来た裕福な夫婦の車が
この砂漠の真ん中でエンストを起こしてしまいます。
彼らは、ネイティブアメリカンの血をひく青年・ボーイ(リバー・フェニックス)に助けられ
一人住まいの彼の小屋に泊めてもらうのです。
しかし、彼は美しい人妻バフィー(ジュディ・デイボス)に執着し始め、
2人をこの砂漠に足止めしようとします。
次第にこの青年の狂気が見えてくる・・・。



妻を病でなくし、孤独で朴訥な青年。
・・・はじめはそのように見えていたのですが、
次第に狂気をのぞかせていく青年。
果てしなく広がる砂漠は、彼らを閉じ込める檻と同じ。

まるでこの砂漠全体が青年の手のひらの中のようだ。
そして、青年の狂気にあてられた夫にもまた、
狂気が伝染していくようでもある。
白人に迫害された歴史を持つネイティブアメリカンが、
ここではまたさらに、核実験によって住む場所を奪われて行った。
そういう背景の上に成り立っている悲劇。
青年の救いようのない孤独と狂気が印象深い作品です。



さて、リバー・フェニックスが見たくて見た、
などと言っても、実のところ他には「スタンド・バイ・ミー」くらいしか見ていない。
・・・あ、インディ・ジョーンズは見たけど。
お恥ずかしい限りです。
せめて、「マイ・プライベート・アイダホ」くらいはそのうち見ようと思います。
生きていれば40半ば・・・
一番いい時期なんですけどねえ。
つくづく残念でした。



ダーク・ブラッド [DVD]
リヴァー・フェニックス,ジュディ・デイヴィス,ジョナサン・プライス
TCエンタテインメント


「ダーク・ブラッド」
2012年/アメリカ・イギリス・オランダ/86分
監督:ジョルジュ・シュルイツァー
出演:リバー・フェニックス、ジュディ・デイビス、ジョナサン・プライス
リバー・フェニックスを偲ぶ度★★★★★
満足度★★★☆☆