映画と本の『たんぽぽ館』

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「限界集落株式会社」黒野伸一

2014年12月18日 | 本(その他)
人々の意識こそが一番の問題

限界集落株式会社 (小学館文庫)
黒野 伸一
小学館


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起業のためにIT企業を辞めた多岐川優が、
人生の休息で訪れた故郷は、
限界集落と言われる過疎・高齢化のため社会的な共同生活の維持が困難な土地だった。
優は、村の人たちと交流するうちに、
集落の農業経営を担うことになる。
現代の農業や地方集落が抱える様々な課題、抵抗勢力と格闘し、
限界集落を再生しようとするのだが……。


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限界集落。
今、日本の地方はこの問題で頭を抱えているところです。
田や畑はあるのに、人がいない。
若い人がどんどんいなくなって、老人ばかり取り残された村。
そこへやって来たのが「経営」のプロである多岐川。
本作でユニークなのは、
自然に憧れ、無農薬や有機栽培の農業を始めたいという人ではなくて、
純粋に「経営」という立場から農業を考えるところです。
これまではあくまでも、個人・家で行っていた農業を共同で行うことで、
もっといろいろな可能性が見えてくるのではないか・・・ということなんですね。
経費の効率化や、作業分担、
消費者のニーズに合わせた作付、流通の仕方・・・等々。
都会の生活に疲れて田舎で暮らしたいと思う人は多いはず。
でも、いきなり農業を始めると言ってもどうしていいかわからない。
会社組織であれば、とりあえず何か一部の役割を果たして「給料」を貰えばいい。
人が多くいれば休みだって取れる。
テーマパークのようにまでなってしまうのはどうかと思いますが、
実際、こういう方法はすごく現実的で今後に向けて有効なのでは・・・と思います。
まさに地方再生へ向けてのヒントがありますね。


それにしても「共同化」に反対の人々や「農協」の嫌がらせ・・・。
何処にでもこうした軋轢があるのでしょうが、
人々の意識をも変えていかなければダメですね。
そこが最も難しい。

「限界集落株式会社」黒野伸一 小学館文庫
満足度★★★★☆