はじめダラダラ、ラストでドッキリ
烙印(上) (講談社文庫) | |
池田 真紀子 | |
講談社 |
烙印(下) (講談社文庫) | |
池田 真紀子 | |
講談社 |
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ボストン郊外の静かな夕暮れ、チャールズ川沿いに自転車を走らせていた、
23歳のエリサ・ヴァンダースティールの死体が
あたかも雷に打たれたかのような状態で発見された。
検屍局長ケイ・スカーペッタはこれが神の偶然の行為ではないことを事件現場で直観し、
何の痕跡もない謎の感電死の真相に迫ろうとする! (上)
匿名サイバーテロリストから奇妙な詩が届き、事件は複雑な様相を呈し始める。
その脅迫メッセージは止まらず、調査を進めるケイとその周辺にもいよいよ危険な気配が漂い出す。
天才ハッカー・姪のルーシーに助けを求めるが、
元FBIのサイコパスで、邪悪かつ凶悪な宿敵、キャリーの影がまた再び忍び寄ってくる。(下)
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ずっと年末に新刊が出るのが恒例となっていた本シリーズなのですが、
2017年末には出ないので案じていましたが、2018年末に2年ぶりに刊行されました。
おなじみ「検視官」シリーズ。
前前作で重症を負ったスカーペッタでしたが、一応その傷は治癒したようです。
恐ろしい傷跡は残ったものの。
本作はある異常な暑さがボストンを襲った一日の出来事。
川沿いの道で自転車を走らせていた女性が倒れていたという
事故あるいは事件の調査に向かうスカーペッタ。
しかし上巻ではいつまでたっても肝心の検死が始まりません。
スカーペッタの様々に逡巡する心境が描かれるばかり。
突然訪ねてくるという、気の合わない妹・ドロシーのこと。
意外にもドロシーと交際をはじめたらしいマリーノのこと。
養子・デジとの生活が落ち着きを見せ始めた姪・ルーシーのこと。
最近届き始めた不可解なメールのこと。
邪悪な宿敵、キャリーの動きのこと。
未だに見惚れるくらいに好きだと思う夫、
けれど仕事モードのときは他人のようなベントンのこと。
それにつけてもあんまりな暑さで、汗まみれでぼろぼろになっている自身のこと。
等々・・・。
ルーシーやベントンが何かを告げにスカーペッタのもとに来るのですが、
肝心なことはなかなか切り出さず、全くイライラさせられます。
上巻を読んだ限り、もしかするとこれは失敗作なのでは・・・?
などという疑念を抱いてしまったくらい。
しかし、下巻に入ってようやくストーリーが動き始めます。
スカーペッタの敬愛するある人物の突然死。
どうやらその死因と今回の自転車の女性の死因が同じもののようだ・・・。
そうすると考えられるキャリーの影。
まるで雷に打たれたかのような、感電による死。
そうしたある"兵器"が使用されたようだ・・・。
最後の驚きは、暑く長い夜が開けたあとにありますので、
そこまで辛抱強く読むことをおすすめします・・・。
文庫の帯に「渾身の大団円」とありますので、
もしかしてこのシリーズはこれで最後となるのでしょうか・・・。
それにしては多少あっけないという気がしなくもないですが。
でももうこれ以上スカーペッタの様々な心配の種を聞かされるのもイヤなので、
ここらが潮時かもしれません。
「烙印 上・下」パトリシア・コーンウェル 池田真紀子訳 講談社文庫
満足度★★★.5