映画と本の『たんぽぽ館』

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女王陛下のお気に入り

2019年02月21日 | 映画(さ行)

ドロドロの女の愛憎

* * * * * * * * * *


18世紀イングランド、アン女王の時代。
イングランドはフランスとの戦争下にあります。
アン女王(オリビア・コールマン)の幼馴染であるレディ・サラ(レイチェル・ワイズ)は、
病身の女王に気に入られ、絶大な権力を持っていました。

当時議会はあったのですが、最終決定権は女王にあり、
結局女王の意見を左右するレディ・サラがキーパーソンとなっていたわけです。
そんなある日、没落貴族の娘で、サラの従姉妹・アビゲイル(エマ・ストーン)が
宮中に職を求めてやってきます。
始めは厨房の下働きだったアビゲイルですが、女王のお気に入りになりたいがために画策し、
ついに女王の侍女となることができます。
そして、女王の一番のお気に入りの地位を得るために、サラとアビゲイルは火花を散らすようになり・・・。
戦争を巡る政治駆け引きのために、
サラ側につく議員とアビゲイル側につく議員がいて、宮中が真っ二つ・・・。

 



先にみた「ヴィクトリア女王最後の秘密」でもそうでしたが、
こちらでも女王の孤独が浮かび上がります。
アン女王は痛風に苦しんでいました。
王族ならではの病ですね。
当時はその原因もわからず、さしたる治療法もなく、さぞかし大変なことだったでしょう・・・。
政治のことなどよくわからないのに重大な決断をくださなければならないし、
体は思うようにならず、心を許せるのはサラのみという状況だった女王。
なんでも思うがままの立場のようでいて、結局何一つ思うようにはならない、という身の上。
他にすることもないので居室でうさぎを飼っていたりする・・・。
そんな彼女が哀れです。



そんな中で、彼女にとってはサラだけが頼り。
サラにとって女王が必要な以上に、女王にとってもサラが必要。
そんな関係を崩したのが、アビゲイルです。
二人の仲に割り込んだ彼女は、なおもサラを蹴落として女王を独り占めしようとする。
女王にとっては、二人がやきもちを焼いて争っているのが面白くて仕方がない。
今までそんなにも自分を必要とされたことがないものだから・・・。
実のところ、体の関係まで持って女王の気持ちを引きつけようとする熾烈な女の闘いはもう、
傍観者としては笑ってしまうほかありません。
ドロヌマのような女の闘い。
冒頭で、馬車から落ちて泥まみれになって現れたアビゲイルが
その後の彼女を予言していました。



一見したイメージでは、サラのほうが冷たく強硬のように見えます。
そしてアビゲイルのほうが無邪気で癒し系のようでもある。
が、しかし! 
人は見かけで判断してはいけません。
サラは思ったことをずけずけ言うし、おべんちゃらなんか言わない。
けれど少なくとも嘘はいいません。
それに反してアビゲイルは・・・。



仕方ないですよね、女王という身の上では、人を見る目なんてこれまで養う場もなかった・・・。
この熾烈で滑稽な三つ巴の女の愛憎。
・・・いや、そこにほんとに「愛」などあったのだろうか。
彼女らが本当に求めていたのは何だったのか。
ふと考えてしまうラストでもありました。

<シネマフロンティアにて>
「女王陛下のお気に入り」
2018年/アイルランド・イギリス・アメリカ/120分
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:オリビア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ、ニコラス・ホルト、ジョー・アルウィン

ドロヌマ対決度★★★★★
満足度★★★★.5