映画と本の『たんぽぽ館』

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ウォーキング・ウィズ・エネミー ナチスになりすました男

2019年02月22日 | 映画(あ行)

制服だけで入れ違ってしまう立場

* * * * * * * * * *

実在した、ビンチャス・ローゼンバウムをモデルとしたストーリー。



1944年、ハンガリー。
ハンガリーはナチスドイツと同盟関係を結んでいたため、戦火を免れていました。
しかし、国家元首ホルティが連合国との講和を模索していることに気づき、
ナチス軍がブダペストに侵攻を始めます。
それまでユダヤ人は差別を受けることがあるものの通常の生活を営むことができていたのですが、
アイヒマン指揮下で、ハンガリーでもユダヤ人一掃作戦が始まります。
労働奉仕として収監されていたユダヤ青年エレクは、辛くも収容所から脱走。
しかし故郷の我が家はすでに家族はいなくなっており、
近所の家族が大きな顔をして住み着いているのでした・・・。
離散した家族や仲間を探し出そうとするエレクは、ブダペストの地下組織に加わります。
そしてある時、ナチス将校の制服を手に入れ、
ナチスになりすまして収容所へ送られる寸前のユダヤ人を救い出しますが・・・。

 

ユダヤ人だろうとドイツ人であろうと、制服を着てしまえば皆同じ・・・。
差別って一体何なのかと、そうした皮肉をつくづく感じます。
以前見た映画にもこうしたシーンがいくつかありました。
それにしても、あまりにも危険ななりすまし。
ヒヤヒヤしますね。



ナチスによるユダヤ人迫害については、
ポーランドやチェコスロバキア、フランスを舞台としたものが多く、
ハンガリーが舞台というのは私には初めてかもしれません。
とにかくヨーロッパ中がかき回されたということでありましょう。
ナチス支配下となった国々は、ナチスの戦略に協力しなければならず、
否応なくユダヤ人弾圧を始めるわけです。

本作中ではハンガリーの内部で率先してナチスに協力する
「矢十字党」などという組織が出来上がったりしています。
恐ろしいことです・・・。

そしてまた本作では、ハンガリー元首が、早く連合軍に降伏してしまおうと画策しています。
このままナチス支配下にあるよりも、連合国に降参したほうがマシと思えたのでしょう。
敗戦を望むという矛盾した事になってしまっています。
しかしこのことは矢十字党にとってはとんでもない裏切り行為でもあり・・・、国内も分裂。
混乱を極めています。

 

いくつもこの時代の映画はありますが、まだまだ知らなかったことも多いのです。
飽きずに作り続けていただきたい。

ウォーキング・ウィズ・エネミー ナチスになりすました男 [DVD]
ジョナス・アームストロング,ハンナ・トイントン,ベン・キングズレー,チャールズ・ハベル,ウィリアム・ホープ
アメイジングD.C.


<WOWOW視聴にて>
「ウォーキング・ウィズ・エネミー ナチスになりすました男」
2014年/アメリカ・カナダ・ルーマニア・ハンガリー/113分
監督:マーク・シュミット
出演:ジョナス・アームストロング、ハンナ・トイントン、ベン・キングスレー、チャールズ・ハベル、ウィリアム・ホープ

歴史発掘度★★★★☆
勇気度★★★★★
満足度★★★★☆