映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ミナリ

2021年09月16日 | 映画(ま行)

新たな地に根を下ろす

* * * * * * * * * * * *

1980年代アメリカ南部。
農業での成功を目指し、
家族を連れてアーカンソー州の高原に移住してきた韓国系移民ジェイコブ。
荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを目にして
妻・モニカは不安を抱くのですが、ジェイコブは希望に燃えています。
やがて、子どもたちの面倒を見るために妻の母・スンジャが韓国から呼ばれてやって来ます。
夫婦と子供2人、そしておばあちゃん。
賑やかな暮らしになりますが、しかし、農場の経営は思うように順調にいかず、
追い詰められていきます・・・。

アメリカでは貧乏人の象徴のようにして、よく映画でも見かけるトレーラーハウス。
でも、意外と中は普通の家と変わらぬ作りで
(日本の住居から見ると、全然狭い感じはしない)
私はちょっと住んでみたい気がしたりします・・・。

この一家は、韓国からいきなりこの地に来たわけではなくて、
アメリカのいくつかの地を渡り歩いてここまで来たようです。
夫は理想に燃えているけれど、妻は現実的。
きっと農業はそんなにうまくいかず、この地も去ることになる、
とハナから思っているようでもある。

さてそこへやって来たおばあちゃんがナイスです。
料理はしない。
口が悪い。
子どもたちに教える遊びは花札。
始めのうちは子どもたちに嫌われてしまいますが、元来子供の扱いはうまい。
すぐに仲良くなります。
このおばあちゃんが、川岸に“ミナリ”のタネを撒くのです。
ミナリ、すなわちセリですね。
韓国からもってきた、この地にはないミナリのタネ。
この一家にいろいろなつらいことが襲いかかり、
なんとか耐え抜いたラストシーンは、その川岸。
いつの間にかミナリがしっかりと根を下ろして、生い茂っているのです。
よそからやって来た「移民」とミナリが重ね合わせられています。
シャクシャクとして鮮烈な、仙台名物セリ鍋を食べたくなりました・・・。

ジェイコブはまず畑に必要な水源を探そうとします。
現地のアメリカ人はダウジングというのでしょうか、
棒を両手で持って指し示す場所を掘ればいい、と言います。
でもジェイコブはそんなものは信じず、それよりも頭を使えばいいのだ、と言います。
低くなっていて、木があるところ、そこに地下水がある、と。
確かにそこを掘ると水があったのですが、やがてその水は涸れてしまいます。

地下水が得られず水道水を使ったために、費用がかさみ
やりくりが苦しくなっていく・・・と言う悲劇へ続くのですが、
色々あった終盤、ジェイコブはついにダウジングの業者に頼るシーンが描かれていました。
郷に入れば郷に従え、という言葉もありますね。
自分たちのやり方と、その土地ならではのやり方。
試行錯誤して良い方法を考えていく。
土地の人たちとの交流もまたしかり。
そうしてやがて彼らもこの土地に根を下ろして行くのでしょう。

ステキな作品でした。

「ミナリ」

2020年/アメリカ/115分

監督・脚本:リー・アイザック・チョン

出演:スティーブン・ユアン、ハン・イェリ、アラン・キム、
   ノエル・イイト・チョー、ユン・ヨジャン、ウィル・パットン

 

おばあちゃんのたくましさ★★★★★

開拓精神度★★★★☆

満足度★★★★★



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