西部劇じゃなくて、ファンタジー
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ゴールドラッシュに湧く1851年。
殺し屋の兄弟イーライ(ジョン・C・ライリー)とチャーリー(ホアキン・フェニックス)は、
地元の権力者の依頼を受け、黄金を探す化学式を発見したという化学者を追うことになります。
連絡係・モリス(ジェイク・ギレンホール)は
一足先に化学者ウォーム(リズ・アーメッド)に追いつき、さり気なく接近。
やがてこの4人が成行きから手を組んで金を探すことになりますが・・・。
本作、西部劇には違いないのですが、これまでの西部劇とはなんだか手触りが違います。
それもそのはず、監督ジャック・オーディアール氏はフランスの方ですね。
あえて「西部劇」というくくりを意識せずに作ったという印象です。
まずこの4人というのがユニーク。
殺し屋兄弟は兄イーライ・シスターズと弟チャーリー・シスターズ、
つまり名字が「シスターズ」。
だから、シスターズ兄弟、“The Sisters Brothers”が原題です。
面白い!
でもこの二人、性格がぜんぜん違うのです。
粗暴で危なっかしいのは弟チャーリー。
兄イーライは心優しく、弟が心配で一緒にいるだけという感じです。
ただしその兄も、銃を手にして相手と対峙するときには非情に徹して凄腕。
一方化学者のウォームは理想郷を作ることを夢見ているのです。
その話を聞くうちにモリスは彼に同調してしまう。
私は本作、黄金を見つけた4人がその後、分け前を巡って殺し合いを始めるのかと思っていました。
ところがそうではなかったのですね。
結局欲にかられて事件が起こるというのはそのとおりなのですが。
そして私は思うのですが、これは「行きて帰りし物語」で、ファンタジーの作りなのです。
黄金を探す旅の仲間の物語。
黄金を見つける「魔法」も出てきます。
ただしこれは自分の身をも傷つける黒魔法だ。
苦難の旅の間に、彼らは自分の目指すべき方向を見定める。
イーライはホビットの村に帰り着いたビルボ・バギンズ。
(フロド、というよりはビルボのほうがイメージが近いもんで・・・)
このように考えるとちょっと面白い。
それと本作はこの時代の「生活」感がすごくよく出ているのです。
イーライが初めて歯ブラシと歯みがき粉を使うシーン。
馬が傷ついてついには死んでしまったり、髪を切るシーンがあったり。
夜でも明るく賑やかなサンフランシスコの街に驚く兄弟。
初めて見る海の感動。
そんな光景のおかげでこの時代性が妙にリアルで身近に感じてしまう。
豪華キャストも無駄じゃない。
ユニークな物語です。
<シアターキノにて>
「ゴールデン・リバー」
2018年/アメリカ・フランス・ルーマニア・スペイン/120分
監督:ジャック・オーディアール
出演:ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、ジェイク・ギレンホール、リズ・アーメッド、レベッカ・ルート
生活感★★★★☆
ファンタジー度★★★★☆
満足度★★★★☆
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