映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「カイシャデイズ」 山本幸久

2011年05月05日 | 本(その他)
働くことの意義って・・・?

            * * * * * * * *

山本幸久さんのお仕事系小説。
このストーリーの舞台は、COCOスペースという小規模な内装会社です。
そこで働くいろいろな人に焦点が当てられますが、
中心となるのは主に3人。

わがままで強面だけれど、人望が厚い営業のチーフ高柳。
いつも作業服の昭和風二枚目、施工管理の篠崎。
そして、おきて破りの天才肌デザイナー隈元。

この三人で組んで仕事をすることが多いのですが、
それぞれ情熱たっぷりで「楽しく」仕事しているのが、なんともたのもしい。


新入りの社員が高柳にいいます。
「仕事、楽しそうじゃないですか」
「楽しいわけないだろ」
「そうなんですか? ならどうして仕事をしているんですか?」
「知りたいか?」
「ええ」
「だったら明日、会社にこい。
そして外回りするおれについて歩いて、その目で見てたしかめろ」


「楽しいわけないだろ」と高柳さんはいいますが、
でもやっぱり楽しそうだ。


巻末に、この文庫本のための書き下ろし「シューカツデイズ」が載っています。
これは、もうイヤになるほどシューカツに破れた女子大生が、
ふと喫茶店の窓から、向かいの喫茶店の改装工事現場に日参する
上記三人の仕事の様子をみて、
いいなあ・・・、一緒に働きたい、と思ってしまうお話。

単に内装会社といっても
営業、設計、見積、工事、工事後のメンテ、資金の回収
・・・いろいろな仕事があって、それぞれの担当がいて、
すべての連携でなりたっています。
そこにもまたいろいろな人がいて、
気の合う人、いけ好かない人、気むずかしい人・・・
それでも、皆関わり合いながら成果を上げていく。
その中の一部分に過ぎないけれど、自分がいて、そしてみんながいて、
全体がうまく回っているという実感
・・・これが仕事をする意義なんだろうなあと思います。
そういうことを、しみじみと感じさせるいいストーリーです。
だから山本幸久さんのお仕事系小説はやめられないんですよね。



実のところ、私もこんな風に何かを作り出す仕事にはあこがれてしまうんです。
事務の仕事は退屈ですしね・・・。
けれども、事務とはいえ、毎日ただパソコンに向かっているだけでは済まないですよ。
やはり何かしら他の人々とのつながりナシには仕事は進まない。
うだうだしていないで、がんばらなくちゃ!です。

カイシャデイズ (文春文庫)
山本 幸久
文藝春秋


「カイシャデイズ」山本幸久 文春文庫
満足度★★★★☆


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