ダメ男は女が作る
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又吉直樹さん原作の本作、コロナ禍で公開延期になっていたのですが、
この度ミニシアターで封切り、そしてAmazon prime videoにて配信が始まりました。
プライム会員なら何と無料!!
いよっ、太っ腹!!(思わずCMになってしまった。)
というわけで、さっそく見たわけです。
中学からの友人と立ち上げた劇団で脚本家兼演出家を担う永田(山崎賢人)。
しかしあまりにも前衛的なその作品は酷評を受け、劇団員にも見放され解散寸前。
そんなある日、永田は自分と同じスニーカーを履いている沙希(松岡茉優)を見かけ声をかけます。
沙希は服飾を学ぶ学生で、かつては女優の夢を持ってもいました。
そして2人の恋が始まります。
やがて、お金のない永田が沙希の部屋に転がり込んできて、
しばしは「ここが一番安全な場所」と思える日々が続きますが・・・。
やがて互いに大切に思いながらも、傷つけ合う事になる・・・。
私、本作で悟りました。
「ダメ男」は女が作るのだと。
永田は自意識過剰で自分が傷つくことを極端に恐れるメンドクサイ男なのです・・・。
それがわかるから、沙希はいつも優しく笑って(元々はそういうヒトでした)彼をうまく受け入れていた。
でも、次第にあえて言葉を選ぶようにもなる。
まるで母親のように、沙希は永田を肯定的にとらえて優しくします。
・・・でも多分それがね、男をダメにするような気がする。
甘やかしちゃダメなのですよ・・・。
やがて沙希は2人の生活を支えるために学校はやめて、昼も夜もバイトをはじめます。
永田はヒモ状態。
作中で沙希が「せめて光熱水費を出してもらえないかな・・・」とおずおずと言うのですが
「ここは沙希の家なのに何で俺が光熱水費を出すんだ?」という永田。
ほんっと、クズだわ、この男!!
いえ、実のところそう言いながら、永田本人も傷ついているワケではありますが・・・。
結局、女の優しさが男をダメにする。
そしてそのダメさが自分に跳ね返ってきて、女もダメになっていく・・・。
そういうことなのだと思います。
おばちゃんが外から分析すればそういうことなのですが、
もちろん、若い当の本人たちはそんなことはわからない。
互いに大切な存在であるにもかかわらず、傷つけ合ってしまうという、
理不尽さ、切なさがリアルに胸に迫ります。
そして、最後に驚きかつ感動のラストシーンがありまして、
でもこれ、原作ではどうだったのだろう?と思わず考えてしまいましたが・・・。
もちろんこんなシーンは映画でなくてはできるモノじゃありません。
これは原作にはなくて、行定監督の手腕によるものだそうです。
ブラボーです!!
原作を読んだという方も、ぜひ見るべきです。
山崎賢人さんのやさぐれたのも悪くないなあ・・・と思いつつ見ていましたが、
イケメンでもやっぱりダメ男はダメ男!!と思うようになり、
ここまでのダメさを出せたというのは、やはり演技力のたまものといっていいかもしれません。
ミーハー作品から脱却できたのではないでしょうか。
逆にファンになりました。
さてそれにしても、作中でも出てきた小劇場のシーン。
あの小さいながらも満席の状態というのは、今となっては夢のようです・・・。
多くの劇団の関係者が困り果てているだろうと思うと切なくなります。
時間はかかっても、いつかかつての日常が戻ってきますように・・・。
<Amazon prime videoにて>
「劇場」
2020年/日本/136分
監督:行定勲
原作:又吉直樹
出演:山崎賢人、松岡茉優、寛一郎、伊藤沙莉、浅香航大
ダメ男度★★★★★
傷つけ合い度★★★★☆
満足度★★★★☆
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