性加害を握りつぶす構図
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数百件のリサーチとインタビューで得た膨大な量の実話を元に、
フィクションとして完成させた作品。
名門大学を卒業したジェーン(ジュリア・ガーナー)は、
映画プロデューサーを目指して、有名エンタテインメント企業に就職しました。
業界の大物である会長のもと、ジュニア・アシスタントとして働き始めます。
アシスタントといってもつまりは雑用係。
必要な資料のプリントアウト、出張旅行の手配、
上司や来客が飲み食いしたものの後始末、掃除やゴミの始末も・・・。
でも、ジェーンは気づき始めています。
ここではハラスメントが状態化。
会長の意に背く様なことがあれば、
怒鳴り散らしけなされた上に、反省文を書いてメールで送るようにと言われる・・・。
チャンスをつかむためには会社にしがみついてキャリアを積むしかないと、
耐え続けますが、ジェーンはさらに会長の許されない行為を知ってしまいます・・・。
2017年にハリウッドを発端に巻き起こった#MeeToo運動を題材にしています。
つまり本作、私が先に見た「シー・セッド」を
別の視点から見たもの、と言っていいでしょう。
ここに登場する「会長」の実名は出てこないのですが、
映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインを指すことは明らかです。
ジェーンは、特に会長に目をつけられて入社したわけではないようで、
しばらくは会長の悪癖にも気づいていませんでした。
後に男性の同僚が漏らします。
「きみは大丈夫だ。会長の好みではない」と。
本作はジェーンが体験したある一日だけを順を追って進行します。
早朝まだ暗いうちに、一番乗りで出社。
雑用でもいい、とにかく一生懸命働いて認められ、
本来やりたい仕事に近づきたいという思いにあふれています。
ただ、会長の横暴に、オフィス皆で耐えている感じには気づいている・・・。
この日、また別のアシスタントを入れることになったということで、
いかにも田舎出の若い女性がやってくるのですが、
ジェニーは彼女に高級ホテルを用意するようにと言われます。
ジェニーはその意味に気づいていく・・・。
誰もがその状況を薄々知りながら、
誰も咎めることができないし、もちろん止めることもできない。
それをすれば、職を失うことになる・・・。
このまま見てみないふりをすれば、
社会的にもステータスのある職場で、うまくいけば出世もできるかもしれない。
逆にそれを騒ぎ立てれば、どうなるか分からない、次の仕事さえ危うい・・・。
こんな状況で、「真実」を口にできる人がどれだけいるでしょう・・・。
たった1人の権力をにぎる人物のために、多くの人が複雑な心中を抱えながら、
知らないふりを続けていく
・・・ということの構図がとてもよく見える作品となっています。
被害者本人だけでなく、そういうことを
見聞きしたり感じたりする周囲の人たちの行動をこそ、変えていくことが大切。
この度のジャニーズの問題を、こういうことの規範として行ければいいなと思います。
<サツゲキにて>
「アシスタント」
2019年/アメリカ/87分
監督:キティ・グリーン
出演:ジュリア・ガーナー、マシュー・マクファディン、マッケンジー・リー、クリスティン・フロセス
性加害の構造度★★★★★
危機感度★★★★☆
満足度★★★★☆
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