映画と本の『たんぽぽ館』

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ディストラクション・ベイビーズ

2018年08月09日 | 映画(た行)

屈折した孤独感

* * * * * * * * * *


豪華キャストにつられてみてみましたが、
青春モノでも普通の感動作とは程遠い、まさに“破壊”的作品でした・・・。



愛媛県の小さな港町。
いつもケンカばかりしている泰良(柳楽優弥)は、ある日突然町から姿を消し、
松山の中心街で強そうな相手を見つけてはケンカを売るようになります。
そんな泰良を見かけた高校生・裕也(菅田将暉)は、泰良とともに行動するようになり、
通行人に無差別に暴行を加えるなど、次第に暴力性をエスカレートさせていきます。
そしてついには車を強奪し、その車に乗り合わせていた少女・那奈(小松菜奈)をも巻き込んでいく・・・。

ここで泰良は非常に無口で、ついに彼が暴力を繰り返す理由を語らないし、
作中で明かされることもありません。
ただひたすらに戦うことのみを楽しむ“モンスター”のようでもある。
なんだか私には彼が、殴ることよりも殴られることを楽しんでいるようにも思われるのです。
なにも持たない自分を人は振り返ることすらしないけれど、
こちらが殴りかかれば相手も殴り返してくる。
こんなふうな相当に屈折したコミュニケーションを求めるという「孤独」を
彼は抱えているのかもしれない。
泰良が相手にするのは大抵が街のチンピラ風情で、
別にお金目当てでも何でもないので女子供は相手にしません。
ところが、彼に心酔する裕也は実際クズなやつで、
もともと自分の体力には自信がないので、自分より弱いものを相手に選びます。
つまり殆どが女性。
そして相手のお金を奪ってしまう。
菅田将暉さんはこんなふうな威勢ばっかりよくて狡くてダメなやつの役が
よく似合っちゃうのですよねえ・・・。
しかし泰良はそんな裕也を見てもなにも言いません。
そもそもそんなことには興味がないのでしょう。
日常性とか、安直な平和とかを望む気持ちはサラサラない、
ある意味純粋なモンスター。



奈那の破壊力もすごかったですね。
彼女を相手にするには、裕也は小モノ過ぎたのかもしれません。



さて一方、泰良の故郷ではただ一人の肉親・弟の将太(村上虹郎)が、兄のことを案じています。
街に出て兄の行方を探したりもする将太は、まあ普通の感覚をもった高校生。
本作の中では一番マトモな人物。
この人物の配置はなにを意味するのだろうかと逆に考えてしまいました。
もしかすると、これは少し前の泰良なのかもしれない。
こうした普通の少年が、虚無を抱え暴力性に生きがいを感じるようになるまでに一体何が彼に起こったのか。
そこが知りたくなりました。

ディストラクション・ベイビーズ 特別版(2枚組)[DVD]
柳楽優弥,菅田将暉,小松菜奈,村上虹郎,池松壮亮
松竹



<WOWOW視聴にて>
「ディストラクション・ベイビーズ」
2016年/日本/108分
監督:真利子哲也
出演:柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎、池松壮亮
破壊力★★★★☆
満足度★★★.5



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