江戸の商店街スタンプもあり
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春はそこまで 風待ち小路の人々 (文春文庫) |
志川 節子 | |
文藝春秋 |
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芝神明宮のほど近く、「風待ち小路」には小さな店が集まっている。
絵草紙屋の旦那は不甲斐ない息子に気をもみ、
生薬屋の内儀は夫の女遊びに悩む日々だ。
しかも近所に新しく商店街ができ、客足が遠のいている。
そこで若い跡取り連中は、町のためにあることを企てるが…。
直木賞候補にもなった、時代小説の逸品。
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志川節子さん、私にははじめての作家さんですが、
直木賞候補作品の中から選んでみました。
本作は小さな店が集まる「風待ち小路」に暮らす人々の日常を連作短編小説で描いています。
一つ芯になっているストーリーが、仇討ち。
もともと藩の内部抗争に巻き込まれて亡くなった男の親族が
町人に身をやつして敵討ちの相手を探し出し、本懐を果たそうとしているのです。
そんな真相が現れるにつけ、虚しくなっていく仇討ちの有様を描き出します。
また、引退間近の大旦那たちと跡継ぎの若い衆の
かすかなわだかまりのようなものもあって、芝居対決になっていくのが興味深い。
またこの商店街の近くに別の商店街ができ、お客を取られ始めている。
そのため再びお客を呼び戻すための工夫を考え始める・・・と。
仇討ち以外は、現代と共通の課題を追っていくところが面白いと思いました。
それから私がこれまで読んでいた時代小説の中では
最も艶っぽいところへ踏み込んでいるような・・・。
読後感も良くて、楽しませていただきました。
図書館蔵書にて(単行本)
「春はそこまで 風待ち小路の人々」志川節子 文藝春秋
満足度★★★.5
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