家族を強要される町
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2人で住むための新居を探しているトム(ジェシー・アイゼンバーグ)と、ジェマ(イモージェン・プーツ)。
ふと入った不動産屋で、住宅地「ヨンダー」を紹介され、
ほとんど強引に連れて行かれます。
そこは全く同じ家が整然と立ち並ぶ奇妙な住宅地。
内見を終えて帰ろうとすると、近くにいたはずの不動産屋が見当たりません。
用は済んだので2人で帰ろうとすると、周囲の景色はずっと同じで、
どうしてもこの町を抜け出すことができず、
そしていつも「9番」の家にたどり着いてしまうのです。
この町に、閉じ込められてしまった2人。
そんな時、目の前にダンボールの箱が置いてあって、中に赤ん坊が入っています。
そして箱には「成長すれば、解放される」と書かれているのです・・・。
冒頭のエピソードでカッコウの托卵のことが語られていました。
カッコウは、別の鳥の巣に自分の卵を産み付けて、
その鳥に自分の卵を温めさせて雛をかえさせる、ということ。
つまりは、トムとジェマが他の誰の子とも知れない赤ん坊を
育てさせられることになることの前振りですね。
これが普通の赤ん坊ならもしかして2人も愛情を注ぐことになったかも知れない。
けれど、この赤ん坊は異常に早く成長。
常に無表情で、空腹など自分の要求が満たされない時には大声で奇声を発したり、
トムとジェマの会話を一言一句まねしてみたり・・・、
とにかく愛情を注ぐような対象とはなりがたいのです。
トムは次第に絶えられなくなり、子供を閉じ込めて餓死させようなどと思ったりするのですが、
ジェマはさすがに多少の母性本能で、子供を殺したり傷つけたりはできない、と思う。
ともかく、不気味です。
全く同じ家が建ち並ぶ光景は、私たちの生活そのものを皮肉っているようでもあり、
でも、その家族には「愛」などというものがない。
毎日毎日が同じようなことの繰り返し、子供だけが異様に早く成長する他は、
見える景色も天候さえも変化がない。
この異様に広い町に、自分たち以外には誰もいない・・・。
結局この子供を育てさせたものの正体、この子供の正体、謎に包まれたままです。
わからないからこそ恐い。
トムが苛ついたあまりに家に火を付けたときには、次の日にはまた家は元通りになっていました。
でも、トムがせっせと庭に穴を掘り始めたときには、その穴は埋まらず、
どんどん深く掘り進みます。
・・・けれど、結局その穴のことも“彼ら”には織り込み済みだったことが
最後の方でわかりますよね・・・。
恐い、恐い。
<Amazon prime videoにて>
「ビバリウム」
2019年/ベルギー・デンマーク・アイルランド/98分
監督:ロルカン・フィネガン
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、イモージェン・プーツ、ジョナサン・アリス
不気味度★★★★☆
満足度★★★.5
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